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内容説明
娼婦に肛門性交を強いて国を追い出された作家マルキ・ド・サド、被虐趣味に溢れた小説を書き一躍有名になったザッヘル・マゾッホ。彼らの嗜好を基に命名された「サディスム」「マゾヒスム」が浸透したのは十九世紀だが、そもそも精神的・肉体的な苦痛を介して人が神に近づくキリスト教に、SM文化の源流はあったのだ。鞭とイエスはどんな関係があるのか? そして、SMが輸入されることもなく日本で独自の発展を遂げたのはなぜか? 縦横無尽に欲望を比較する画期的な文明論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
33
「エピローグ」を読むと本書は語り下ろしらしいのですが、そのことが本書を成立させたのだと思います。タイトルから読者が想像するものを裏切ろうとすると肩に力が入って執筆する結果、難解な本が生まれかねないのですが、本書はエビデンスに乏しく、頼りは著者の知的な蓄積による直感です。それが軽い語り口と平易な言葉の選択から、不意打ちの様に繰り出される鋭い指摘となっている印象を持ちます。本書は皆さんご存じSMを題材にしていますが、文化論です。SMとは性的な関係のことですが、同時に社会関係のことです。SMとは一方的な嗜虐、被2021/11/23
ふろんた
21
巷で言われているSが、攻撃性の強いMであるということは知っていた。SはMの需要によってしか生まれない。Sは奉仕の精神が必要であり大変である。よって、自己の満足を求めるMが増殖し、しかもその欲求が高度で多岐にわたる。幻冬舎新書だし口述筆記だしで断定的な物言いも多く論理が飛躍しているところもあるけど、ちょっと知的な与太話を聞いていると思えば大変面白い。2014/07/22
カッパ
19
【◯】【概要】SMとは信頼関係であり、契約。Sは支配欲が強く虐げてるのではなくMの欲求を満たしてるというのは面白い。また、キリスト教はM的であり、苦しみが少ない世界になり変わりに罰している。文化でもあるといえる。理想のSは求められており、作り上げていく。少女漫画はSMともいえる。なるほど。【感想】2018年一発目の感想。SMについて考えたことなかったが思っていたより綺麗なものだと印象が変わった。2018/01/01
またの名
14
苦痛を求めるキリスト教がSMの源だという与太感のある議論がしっかり人類文明史をSMによって解き明かす話になってるので、予想外の説得力に動揺。サドやマゾッホの文学の他にも民主主義やユートピア思想まで語れてしまう倒錯的世界の奥深さを見せつつ、犯罪行為に到るものはSMの名に値しないと断りも入れる。たんに支配欲だけで加虐に走るのはSではないとの注意書きを怠らない本書において言われるSMはSM(プレイ)ということで、病理学的問題とは別の観点で記述(死の本能・欲動はまともに受け止めるなら殺人や戦争も含む危険な概念)。2018/02/02
KO
9
新書なので内容は薄いものの、キリスト教の観点からSMの成り立ちを読み解くというのは面白かった。サドが神の否定としてSMに至ったというくだりは非常に納得できるものがあった。鹿島茂はフランス文学者なので、ヨーロッパにおけるSMの部分は説得力があったものの、日本におけるSMの価値の部分は納得できない部分も。日本は束縛型の社会で自由が怖いから緊縛のSMに、ということではなくて、むしろヨーロッパ社会に比べると自由すぎる、キリスト教の神のような絶対的な価値観がない秩序がゆるい社会という前提から生まれたものなのでは。2014/11/25