内容説明
黒船到来という外患が内憂に転じ、動乱期が始まった――。激動期には、誰が政治権力を握るかが決定的な重要を帯びる。本書で扱う安政期のキーパーソンは、部屋住みの庶子から幕府権力の絶頂、大老にまで駆け上がった井伊掃部頭直弼だ。条約勅許、将軍継嗣問題、地震、インフレ、コレラなど難問が山積する中、京都朝廷の意向を無視して調印を強行し、反対派を弾圧することで自ら墓穴を掘ることになる……。
目次
第1部 安政内憂録(下田開港;便利屋役人;ひるがえる日の丸;伊豆の大津波;海上の遊牧民;爆発事故;お台場崩壊;水戸と彦根;日本橋と深川;江戸大風水害;講武所始まる;お茶坊主;井伊の赤鬼;ストレスに死す;英遇公子;英国領事は見た;幕末親米派;日米交渉;堀田の大汗;攘夷利権;条約調印;押し掛け登城;戌午の蜜勅)
第2部 安政血風録(安政の大獄;暗黒裁判;安政コロリ;薩海入水;至誠人を動かす;死地の思想;小塚原の首;金貨大流出;天狗の羽ばたき;桜田門外の変;あいまい解決;富士女人解禁;斉昭の死;万延遣米使節団;外国奉行憤死;ヒュースケン暗殺;万延小判;五品江戸廻送令;江戸城御金蔵破り;三人吉三)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
46
図書館本。幕末の日本の急転直下の事態を短くまとめている。小気味良く、読みやすくて、お江戸の混乱を知るにはよい。次巻、いよいよ新選組登場!★★★☆☆2021/07/05
ごへいもち
25
面白かった。小説でもないのにこんなに面白く書いていいのかなとちょっと気になるが楽しんだ2012/07/22
tom
7
幕末の時代の権謀術策と当時の世相が平行して書いている。権謀術策はともかくとして、この時代に生きていた人たちのエピソードがとても面白い。こういうエピソードをきちんと集めて時代を浮かび上がらせる野口武彦さんは偉いと思う。2012/08/12
メグミ
5
大地震や台風、コレラ、貨幣価値の下落、物価高など幕末の人々の気分に大きく影響を与えたと思われるのにサラッと書かれて終わることが多いような事柄も通史の中に盛り込まれていてわかりやすい。こんなに面白いと思ってなかったのでシリーズ全部買っておかなかったことを今とても後悔してる。2014/02/01
ざれこ
5
権力者の陰謀合戦も読み応えたっぷりですが(斉昭に翻弄される人々の悲しくも滑稽な姿とか)、貿易が金流出を促し物価高騰が武士を困窮させ攘夷に走る、という社会的な面がしっかり描かれるのは小説にはない良さですね。2010/03/16