内容説明
怪物との闘いで死亡したフランクリンのあとを継ぎ、“テラー”のクロウジャー艦長が探検隊長になった。氷はいっこうに解けず、彼は艦を出る決断を下す。徒歩で氷原を北米大陸まで進む計画だった。だが、行く手には巨大な怪物が。しかも缶詰が傷んでいたため中毒者が続出し、飢えに苦しめられる。さらに腹黒い一派が叛乱を企てようとしていた。極北の地に展開する壮絶なサバイバル―史実に基づいて描いた冒険ホラー超大作。/掲出の書影は底本のものです
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
34
19世紀中頃、英国の北西航路発見を目指した探検隊の全滅史(下)です。飢え、病、仲間割れ、そして異界の怪物により主要な登場人物たちが、どんどん命を落としていきます。未曾有の危機にあっても格式を重んじる所作が英国ぽくありますか。全滅するのは史実なので、さてさて、どのように決着をつけてくれるかが興味の中心。不死身の怪物とイヌイットの女性の関係が明かになるにつれ、物語はクライマックスへ向かっていきます。1000頁を越す大著であり、読むのに骨が折れますが、冒険小説+伝奇ホラーとして満足度がとっても高い作品です。2018/07/06
鐵太郎
24
このような冒険がはたしてあり得たのか、それはわかりません。ちょっと異常です。特に結末、最後の男の運命はあり得ないかも。しかし、これを単なるホラー冒険小説と言ってしまうのは大きな間違いではないだろうか。そうそう、この本は冬に読むべきです。春先に読んで、失敗しました。(笑) それともう一つ。ダン・シモンズさん、あなたの本は、いつも厚すぎる。(涙)2008/06/19
maja
17
海峡で海氷に閉じ込められた二隻の艦は身動きが取れないまま船倉の金属が圧迫されて絶望的な音を立てる。クロージャー艦長の苦渋の決断。極寒のなか乗務員の飢えの極限状態、壊血病、やがておこる部下の反乱。始終、悪霊のようにつきまとい攻撃してくる怪物。先が見えない不安の上に、底からごそっと抉らえるような救いのなさ。そのなかでの乗務員の各エピソードが浮き立って印象的だ。凄い。シモンズの筆力に圧倒された。近年、北極圏の海峡で2隻が発見されている。 2019/05/18
roxy001960
8
下巻を読む前に、フランクリン探検隊をネットで調べちゃった。最後まで読むと、初めのころから散りばめられていたエピソードの意味が解ってくる。南に向かった隊員たちの最後も書いてほしかったな。2016/05/29
羊山羊
7
史実だったと、読んでいる途中で知った。角幡氏が、同じテーマで本を著している。絶望的な脱出行に裏切り者まで出て冒険終盤では人肉食まで迫られる酸鼻を極める展開に。白い化物は上巻に比べると控えめだが、その分人間が化物より化物じみてくる。これほどハードで陰鬱な内容ながら、シモンズ氏の凄まじい筆力がページを捲る手を止めさせてくれない。また、最終盤でのエスキモーの生き残り方の模範解答に、一堂がもっと早くこれを知っていれば、と思ってしまう。絶望と極寒が彩る、圧倒的面白さの冒険エンタメ。傑作だ。2019/02/03