内容説明
土地の人々が「奥山」と呼ぶ普賢岳に続き、寛政四年三月一日、島原の「前山」が火を噴いた。大噴火は地震と津波を誘発し、肥前島原藩七万石の城下町は一夜にして土砂に埋まった――。大自然の猛威を目の当たりにし、恐怖におののく藩主、武士、医師、町民の姿を活写する表題作の他、歴史短篇小説の傑作三篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
40
私の好きな直木賞作家の白石一郎氏の一冊で、4本の中編小説が収録されていました。どの作品も非常に味わい深くてとても良かったです。1本目の「島原大変」は1792年に長崎県の雲仙普賢岳が大爆発を起こし、大量の土石流や大津波が起こって一万五千人を越す死者が出ました。その時が舞台の小説で、そこで開業医をしている一医師の目線で描かれており、とてもリアルでまた色んな人達の人間模様も見事に描写されており読みがいがありました。他の残り3編も、それぞれにとても味わい深い内容で、私自身とても惹きつけられました。2018/05/13
TheWho
11
海を題材にした歴史小説家の著者が描く、歴史短編物語。島原大変肥後迷惑と云われた寛政4年(1792年)に起きた雲仙普賢岳の大噴火に伴う津波被害の壮絶な実態を克明に描いた表題作を皮切りに、豊後国(大分県)での人馬と呼ばれる奇妙な乗り物の話、凡将と蔑まされた元豊後国の大名大友氏の末裔の顛末。そして村上水軍の末裔で転封して生き残った海なし城無し領主の城作りの執念など4つの物語。いずれも九州の片田舎の少領地で、歴史の狭間で漂う悲哀を哀愁深く描く秀作です。2015/08/22
issy
1
寛政の雲仙大噴火とそれに伴う津波による島原城下の人々の被災に際し、長崎で学んだ若い医者が他人や医術に対する見方を変え自らの生き方を見直す表題作に加え、豊後の殿様の山登りのための「人馬」に纏わる話、同じく豊後大友宗麟の嫡男義統の生涯を両親との関係とキリスト教への傾倒を通して描く一編、村上水軍の子孫で今は豊後の山奥に藩を構える大名が推し進める「城を作る夢」に巻き込まれた庄屋がいつしか自分の夢として実現に邁進する「海賊たちの城」の四編。いずれも登場人物の描き方が秀逸でぐいぐい引き込まれる。2014/08/12
シュラフ
1
1792年 島原の雲仙普賢岳の山体崩壊で有明海に流れ込んだ土砂が大津波をひきおこして島原と肥後で1万5千名ほどの死者・行方不明者を出した。物語では、大津波による災害の悲惨な様子が生々しく描かれている。若い長崎帰りの医師は藩医・武士らを見下していたが、いざ大津波がおこってみれば何もできない自分自身に愕然とする。現場での藩医・町医者・武士らの奮闘の様子に謙虚になり、藩主との避難同行を辞退して現場での治療活動に従事する。悲惨な災害ではあるが、ラストは医師として目覚めに光明が見える。 2012/10/07
半べえ (やればできる子)
0
★★★2010/12/13