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内容説明
【第16回 山本七平賞奨励賞受賞】 暗号解読など優れたインフォメーション解読能力を持ちながら、なぜ日本軍は情報戦に敗れたか。「作戦重視、情報軽視」「長期的視野の欠如」「セクショナリズム」。日本軍最大の弱点はインテリジェンス意識の欠如にあった。インテリジェンスをキーワードに日本的風土の宿痾に迫る。(講談社選書メチエ)
目次
第1章 日本軍による情報収集活動
第2章 陸軍の情報収集
第3章 海軍の情報収集
第4章 情報の分析・評価はいかになされたか
第5章 情報の利用―成功と失敗の実例
第6章 戦略における情報利用―太平洋戦争に至る政策決定と情報の役割
第7章 日本軍のインテリジェンスの問題点
終章 歴史の教訓
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雲をみるひと
30
大戦時の日本軍のインテリジェンスの実態について論じた本。当時の日本でも意外に情報収集のみならず、処理がされていたようなのは新たな発見だった。もっとも処理された情報はほとんど活用されなかったようだが、これは組織の問題で別次元の話だと思う。いずれにしても日本人として大戦に向かった時代の様子をもっと知る必要があることを改めて気づかせてくれた。実際、外国はこの時代の日本をよく研究している様子。2023/03/19
異世界西郷さん
21
かつて第二次世界大戦を戦った旧日本軍は、インテリジェンスの分野を軽視していたと言われているが果たしてそれは本当なのだろうか? ということについてその実際に迫ろうとする一冊。10年くらい前の本ですがなかなか興味深いことが多く書かれており参考になりました。開明的と見られていた海軍よりもむしろ陸軍の方がインテリジェンスの意識が高かったことは意外でした。ソ連との諜報戦や英米の暗号を解読したりなどかなり善戦していた様子を窺い知ることができたのは良かったです。2017/06/04
てつのすけ
19
戦前、陸軍と海軍それぞれの情報部が協力関係になく、互いに情報を提供していなかったということに驚いた。国家対国家の戦いをしているときに、日本国内では、味方であるはずの陸軍と海軍が敵対していた。これは、戦後においても、防衛省、外務省、警察庁などの情報部が独自に情報を扱っており、何らかわるところがない。本書が出版されてから時が経っているので、改善されていることを願うばかりである。2024/10/30
MUNEKAZ
15
副題の「なぜ情報が活かされないのか」が重要で、日本軍の情報収集や分析は決して劣ってはいなかったし、戦術レベルでは有効に機能した事例も多くあった。ただそれが中長期的な戦略の話になると、各セクションの縄張り争いや上層部の無理解によって全く活用されなくなってしまう。「生の情報を訓練されていない者が見るのは危険」「情報は共有するもの」など、組織で働く人間ならば他山の石としたい事例研究の宝庫。また英米も日本に対する偏見に基づいた過小評価が緒戦の敗北の要因となるなど、情報の活用が普遍的な問題であることを示している。2023/06/26
CTC
14
07年講談社選書メチエ。著者は元防衛庁防衛研究所戦史部教官で、現在は日大危機管理部教授。大変面白く読んだ。まぁまず日本陸海軍のインテリジェンスなどといえば、ミッドウェーやら海軍乙事件の話でもって情報音痴の日本軍の姿を描いてみせ、情報の大切さを説くものと相場は決まっているものだが、本書はさにあらず。情報の収集・分析・利用の各パートに分けて、各国事例と比較して特徴や長短所を明らかにしたうえで歴史の教訓を導いている。「情報に基づかない政策を推し進めた」ために負ける戦争をする事になった事実が見えてくる。2020/05/19