内容説明
少女が神隠しに遭い、居るはずのない子供たちの笑い声が聞こえる……。「化け物屋敷」と噂される友人宅の古家(ふるや)に滞在した「私」は、いつしか「家が見せる夢」に憑(つ)かれていく――(表題作)。雨の夜、裏路地に蹲(うずくま)る影。それは雨粒が象(かたど)った朧気(おぼろげ)な女性の輪郭だった。妖しい美しさに惹(ひ)かれた男は……(「幻の女」)。怪異蒐集家としても名高い著者による、甘美な幻想譚7編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
著者のホラー小説といえば、土俗や人間の業に満ち満ちたものが多いが、本書はそれらとはまた違った趣の作品が収録されている。表題作を始め「緋毛氈の上」とか「金ラベル」とか、どこかこの地上を離れた場所への憧憬みたいな作品は好き。特に「金ラベル」の流星と夢のイメージは忘れがたい印象を残すなあ。ただ個人的に気に入ったのは著者従来のイメージに極めて近い「シーボーン」かな。この手の話の傑作といえば赤江瀑「海贄考」だけど、本作品も十分それに迫る勢い。特に裏側の傷の正体が分かった瞬間等…。久々に著者の短編読めて満足でした。2021/08/31
★YUKA★
46
加門さん、こういう話も書くんですね!『緋毛氈の上』『金ラベル』この2作がとても好みでした。2017/03/04
cryptoryou
43
「美しい家」ビルの狭間に取り残された古家にただよう美しい記憶。〜「迷い子」東京を漂う迷い子となった二つの魂。〜「シーボーン」海岸に流れ着くあの世から戻ってきたモノ。〜「悪夢」ふった女とふられた男、外れなくなった指輪にこもる男の念。〜「幻の女」雨の日にあらわれる女の嫉妬と殺意のかたち。〜「緋毛氈の上」使われなくなった歩道橋の上の茶会。〜「金ラベル」人々の願いがこもった流星の燐寸と少年の冒険。〜目に見えるモノの不確かさあやうさ、世にひそむ妖しいモノ、加門さんらしい短編集。「美しい家」「緋毛氈の上」が良かった。2017/09/26
カムイ
40
居心地の悪くないホラー、幻想、寓話ありの短編集、表題作の【美しい家】は怪談であり家に取り憑かれるストーリー、ジメジメ感ドップリです、【シーボーン】はあの世は海に幻想的でした、カムイは【金ラベル】がお気に入り、ホラーではなくノスタルジーな少年の冒険ストーリーで最後を締めくくりには後味をラムネソーダの清涼感にしてくれた、毎度、感じるのは淡々とした語り口で背筋をモゾモゾさせるのでカムイのイマジネーションを増幅させてくれます。2020/06/29
たいぱぱ
34
視える作家のホラー短編集。七つの短編、それぞれ色が違って楽しめた。「シーボーン」なんて不気味な映像が脳裏にチラついた。映画化できそうです。そしてなんといってもラスト二編にはヤラれました。ホラーというよりファンタジー。このラスト二編で爽やかな読後感さえ感じました。「緋毛氈の上」は懐かしい昔話のようで心が温まりました。2017/07/24