内容説明
夢の中で誰かに見せられた「底のない袋」。その袋に「面白そうだと思うものは何でもみんな抱え込むのだ。底がないからそのうち自然に遺(のこ)したいものだけが残ってゆく。楽しみという底なし袋にとび込むものは何だろう」と好奇心いっぱいに日々の暮しを見つめ、思い出を振り返った珠玉のエッセイ集。(講談社文庫)
目次
底のない袋
通りゃんせ
曙いろのメイク
小ぎれ
銀座の画廊にて
夏の入り口
遠慮のうちがわ
四角い布
紙を着る
おもちゃの話(一)
おもちゃの話(二)
小さな沼
お辞儀
勝手口のうちそと
包丁
箸
鰹節
酢
たわし
笊
おはち
過ぎた時
小まとまり
月あかり雪あかり花あかり
楓の谷
夏至のころ
秋の色
帯一代
胸打つもの
かけがえのない三つのもの
死神
言葉の周辺
たった一度のおにぎり
食事の風景
「斑鳩の記」のこと
露伴の春秋
あとがき
初出一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるき
16
青木玉さん初読み。日常と地続きの文章が心地よい。幸田家三代目の彼女による祖父・露伴、母・文の語りが面白い。日常生活の中には楽しみも喜びも沢山あると教えてくれる。硬すぎないのがまたいい。2015/03/23
きりぱい
9
”勝手口のうちそと”の章がいい。箸や酢、たわしなど、母幸田文のならいをそばで見ていた娘としてどんな風に家事を語るか、おっとりと読めながら、時々文章の運びが似ているなと感じるところがあったり。箸では市原平兵衛商店(箸屋)に来ていたんだーと親近感。幸田文は露伴のことをたくさん書いているけれど、ここでは、遅刻させても朝ごはんを食べさせる露伴がいたり、露伴に小言を言われ続けた文は娘の料理には小言を言わず鷹揚だったりと、孫として娘として語る二人の話もまた興味深くていい。2014/07/23
わっぱっぱ
4
幸田文を読んだ流れで手に取った。 洗練されていて、かつ自然体な文章が、清々しい。 伝統や、先人の知恵といったものに敬意を表しながら、決して懐古趣味にはならず、潔く今を生きる姿勢を素敵だなと思う。 気持ちの落ち着く随筆集。2015/12/09
kaikoma
3
大きな事件が起こる事もなく、日常生活を淡々と描いているだけの様に見えますが、文章から醸し出される心地良さに魅了されます。行間から知性が溢れる書き言葉を紡げるというのは、如何に素晴らしい事かが分かります。自分も老後には斯く有りたしと思います。2012/04/15
あ げ こ
3
「楓の谷」が特に印象深い。『木』「安倍峠」に於いて、本来幸田文が語るはずであった光景。幸田文自身が是非にと願い、訪れた楓の純林で見るはずであった光景。その美しい楓の芽吹きを、彼女の娘である作者が見る喜び。丁寧に言葉を用いて目にした光景を大切に綴り、娘は母より譲り受けた役目をしっかりと果たす。母と娘の繋がりを感じる、とてもいい随筆であった。両方の読者である自分は、一読者が勝手ではあるのだが、ただただ嬉しく思う。2013/09/05
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