内容説明
「宇宙はなぜこのようになっているのか」「宇宙に生命が存在できるのはなぜか」という誰の心の中にもある根本的な疑問を追求したポピュラー・サイエンス。サスキンドはひも理論、インフレーション宇宙論、最新の宇宙観測結果に基づいて、この大いなる謎を探究する。この宇宙の歴史とは「インフレーションの棚」を転がってゆき、極めて小さな宇宙定数を持つ谷で静止することだったという。しかし、この宇宙はもっとはるかに広大な、いわゆる「メガバース」の中のほんのちっぽけな片隅を占めるにすぎない。メガバースの中で、無数の種類の小宇宙が無限回出現するという新しい宇宙像にたどり着く。 世界天文年2009日本委員会の公認書籍。
目次
ファインマンが描いた世界
物理学の難問中の難問
ランドスケープを転がる宇宙
唯一性とエレガンスの神話
晴天の霹靂
ありそうもない偶然を解き明かす
ゴムひもで動く世界
ひも理論の復活
理論の力だけでどこまで行けるか
ルーブ・ゴールドバーグ機械の背後に
泡を吹き出す宇宙
ブラックホール戦争
要約
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
11
ようやく読み終えた。数理式を用いないで、量子力学から宇宙物理学までの膨大な物理世界を親しみやすく語った一冊。電子のスピンやクォークの振舞の量子世界はイメージ豊かに読みたい。マイクロ波背景放射で観測されたビッグバン前のインフレーション宇宙が今や130億光年の広がりの大宇宙に進化し、その大宇宙を支えるエネルギーの70%が光も観測できない真空空間に満ち、もしかしたらクォークの性質を決めるひも理論の極小紐が宇宙膨張とともに大縄跳びの紐のようにも横たわりバタバタと振動しているかも知れない。→2024/08/15
BIN
5
ちょっとずつ読んだので最初の方があまり覚えてない。ひも理論家の著者がなぜ人間が存在するこの宇宙であるのかの考えを他研究者との話を交えて語られてます。最初に素粒子論や宇宙論についての説明から入り、一般人にもできるだけわかるように書こうとしているのでしょうが、ある程度物理の知識がないと難しいでしょう。未だに私はファインマンダイアグラムの良さがわかってないです。キーは人間原理、メガバース。グーゴルという単位を初めて知った。2020/04/27
roughfractus02
5
永久インフレーション理論(A・ビレンケン)、量子情報理論(C・サイフェ)等のアプローチと比較すると、超弦理論の多世界宇宙論が形而上学的語調が強くなるのは、この宇宙は多世界宇宙には偶然だが、人間には必然であるという人間原理を打ち出すからだろう。この原理によって宇宙論は信念の問題を提示し、論理領域では様相論理に議論を移行させる。一方、超弦理論に対する多くの批判に対し、アインシュタインの宇宙定数λの変化から著者が提起する多世界宇宙の景観は、従来の科学の反証可能性(ポパー)なるガイドラインへの挑戦にも見えてくる。2019/02/12
廃
3
なぜ宇宙はかくのごとく人間のような知的生命体が存在できるように微妙な調整がなされているかのごとくであるのか? をテーマとして宇宙論全般の入門的知識も網羅されている本。作者はひも理論と“人間原理”を推す論者で、話の主軸はそこである。
okaka
3
なぜ宇宙はここまで人間に都合よくできているのか、という疑問を素粒子論から考察してゆく本。序章の段階で示される最終的なビジョン(なにやら仏教の三千大世界を思わせるところが興味深し)は理解できるのだけれども、なぜそれが導かれるのかという解説部分になると脳が完全にオーバーヒートしてしまってもうフラフラ。多次元のやさしい解説書ってないのかなあ…。2013/01/19