内容説明
すぐれた企画力で大阪勤音(勤労者音楽同盟)を牛耳っているニヒルな敏腕家流郷正之は、勤音内部の政治的な傾斜を感じている。勤音組織は人民党とつながっているのではないだろうか? 党との関係を探るため、流郷は美貌の経理責任者江藤斎子と情事を重ねた。だが、すべてを知った時、流郷は……。政治の手で操られる集団の無気味なエネルギーを綿密な調査と豊かな筆力で描く長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mariya926
98
やーーっと読み終わりました。なかなか時間が取れなくて、内容もすらすら読めるような内容じゃなかったので結構時間がかかりました。勤労者たちが安い会費で上質な音楽が聴けるという勤音の中に、政治的に利用する人が入り込んだらどうなるか?という話しです。主人公である流郷が次から次へと魅力的な音楽会を企画して成功していく様は読んでいて楽しかったですが、それ以外は共感できる人物もいなく、またこの当時の社会運動についてはよく分からないのでせっかくの機会だから学ぼうと思いましたが、詳しく説明されていないのが残念でした。2018/12/07
優希
90
面白かったです。労働者たちによる音楽団体の立ち上げが政治と絡むのが興味深いところでした。勤音組織と人民党のつながりがあるのを探ることで、対立する音楽団体との闘争を見たようです。政治が牛耳る集団の力は恐ろしいものがあるということを感じさせられました。音楽という身近なものから政治へと話を広げるというのが流石山崎豊子作品と言えますね。2017/07/27
テンちゃん
36
大阪勤音。人民党とのつながり。操られる集団。なかなかの作品。☆42015/09/08
しーふぉ
25
労働者のための音楽鑑賞団体において左翼運動と絡めているのが時代を感じる。2020/08/29
忽那惟次郎8世
23
山崎豊子作品で唯一 映画・ドラマ化されていない作品で その理由が創価学会をモデルにしているからだと言われる この本を読んだ知人から 民音のことを書いた小説だと言われ興味をもち読んでみたが 全く世間の評判などあてにならないことを知った この本は創価学会と思われる宗教団体がちょっと出てくるが 関係ない、また民音も関係ない。山崎があとがきに書いているが 現実の団体を想定して書いているのではなく あくまでもフィクションである。あえて言うならば労音と音協、共産党と思われる団体は登場する。2020/08/27