内容説明
初めてその胸にしまった「秘密」。初めて知った「愛」というもの。学校の自分と、本当の自分とのギャップ。父の古いノートのはじっこに見つけた落書き……。誰もがほろ苦く思い出す、思春期の少女特有の気持ちを綴る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
115
表紙のイラストに惹かれて読み始めた本だった。イラストのような柔らかな話なのかと思ったのが、重たくていろいろな事を考えさせる内容だった。本と自分の関係を描くエッセイ。思春期に父に反発を感じる箇所は、私にも同じようなことがあったので共感して読めた。息をひそめるようにして、家で過ごした作者の中学生時代のやりきれない気持ちが、鮮やかに伝わってくる。ある時父も自分と同じように悩んで生きてきたことが分かり、作者の父へのわだかまりは薄れていく。この部分は本当に感動的で、読んでいて胸が熱くなった。2017/05/07
里季
52
賢い少女が、本と共に内面的成長をするお話。淡々としてそんなに面白味があるわけではないが、幼い頃~思春期へと、そして大人へと成長する過程で誰にも覚えのある感情などが綴られている。父親に対する尊敬の気持ちと相反して軽蔑し、嫌悪する気持ち。自分にも覚えがあるため、そうだったなあと静かに読み終えた。2017/05/12
ぶんこ
41
思っていたのとは違った内容でした。岸本さんの幼少期から20代後半?頃までを書かれたエッセイでした。本の虫だった「読む少女」が岸本さんではなく、転校生のアラカワさんであり、授業中もジャンルを問わずに本を読む姿に(いいなぁ)と思う素直でない自分がいたそうです。この本の中に出てくる本が、学生時代に読んだ本か、哲学系の難しい本だったので、読みたい本がなかったのが淋しい。岸本さん、男っぽい思考の持ち主かと、今まで抱いていたイメージが少し崩れました。2018/05/30
のり
19
エッセイストとして有名な岸本葉子さんのエッセイ、初読みでした。エッセイを書くぐらいだし、タイトルもタイトルだし、さぞかし文学少女だったのだろうというこちら側の期待を裏切るエピソードがたくさん。小さい頃はそれほど読書家ではなかったよう。それでも哲学を勉強していた叔父さんとの出会いなど、文学や哲学の種は密かに小さい頃に心に撒かれていたのだろう。想像していたよりも理系な考え方と文章だと感じた。読みやすくはなかったけれど、人生に関する考え方など、納得する文章にも出会えた。2024/01/04
cithara
9
以前著者のがん治療体験の本を読んだとき、物事をおざなりにしない徹底した追及心に感銘を受けた。私はすぐに「まいっか」と何でもうやむやにするタイプなので。本書の著者紹介に東京大学教養学部卒業とあり納得。高校生から物理に興味を覚えたという。私なら全力で逃げたい教科。私とは全然違う次元で生きている人なのだと思う。もし個人的に話をしたとしたら、次々に矛盾を突かれ論破されそう←あくまでイメージ。「青春」と言われる時期の読書でなければ、感じとれないこともあったのではないか、と後悔する著者。その点に関しては私も同感。2016/06/27