内容説明
十年前、留美子は見知らぬ少年から手紙を渡される。「十年後、地図の場所でお待ちしています。ぼくはその時、あなたに結婚を申し込むつもりです」。いったいなぜこんな身勝手なことを? 東京、軽井沢、総社、北海道……。さまざまな出会いと別れ、運命の転変の中で、はたして約束は果たされるのか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
129
何となく宮本輝の本が読みたくなり、第54回(平成15年度)芸術選奨文部科学大臣賞受賞に 惹かれて、本書を購入した。やはり初期の頃の、心の闇を描ききるスタイルはなくなり、穏やかな作風になっていた。10年前に少年から渡された手紙「10年後の12月5日、蜘蛛が空を飛ぶ場所であなたにプロポーズします」から予感される激動の展開はなく、ただ32歳の留美子と彼女の向かいの家に住む会社社長・上原桂二郎の視点が交互に入れ替わって描かれていく。2011/03/05
あつひめ
74
上下巻に渡っているのでなかなか核心にはたどり着かない。ただ、日々の揺れ動く心、人とのかかわりに要する時間は伝わってくる。飛行蜘蛛・・・北海道でいうと雪虫みたいなものみたいですね。雪の季節を知らせる使者のようなもの。この物語で初めて知りました。さて・・・この、恋愛に不器用な二人はどうなってしまうのでしょう。10年後の約束。冗談だと思っている女ととんでもないことを口走ってしまったと思っている男。立ち寄る店に近所の人が訪れているような世間ってなんて狭いの~と言いたくなるような環境での今後が気になる。2013/03/04
chikara
60
何年振りの再読だろうか。部分的にしか記憶がない。 飛行蜘蛛が意味する事が大きく関わってくるのか。 男性と女性、年代の違う主人公からの視点で進むストーリー。 学ぶべき事柄が随所にあり、引き込まれて行きます。 下巻が楽しみです。2014/08/07
佐島楓
55
十年前、留美子は不思議なラブレターを受け取る。そこに書かれた「約束」は、現実にもまれる毎日の中、忘れ去られてしまうが・・・。下巻へ。2015/12/13
紅香
31
「10年経ったら空飛ぶ蜘蛛の場所で、あなたに結婚を申し込みます。」少年に突然手渡された手紙。あれから丁度10年。約束の冬が来る。。きちんとしていて、でも迷っていて、恋にときめく心も持ち合わせている。それだけで恋に私も落ちる。良識を持っていても一時期不倫をしていた留美子とあの日の少年、俊国がどう近付いていくのか固唾をのんで待っていました。宮本輝さんの世界観がとても好きです。知的でチャーミングで真っ直ぐな登場人物が魅力的です。私も誰かと大事な約束をしていなかったかな?みなさんが上手く行くことを願って下巻へ。2020/12/23