内容説明
ひたすら、淡々と、生きる、長春で。敗戦後、木川正介は、毎日五馬路に出掛ける。知り合いの朝鮮人の配下となり、大道ボロ屋を開業して生きのびている。飄々として掴みどころなく生きながら、強靭な怒りにささえられた庶民の反骨の心情は揺るがない。深い悲しみも恨みもすべて日常の底に沈めて、さりげなく悠然と生きる。想像を絶する圧倒的現実を形象化した木山文学の真骨頂。著者最後の傑作中篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
12
終戦直後の満洲・長春に避難民としとて残されることを余儀なくされた著者の私小説。中国人・朝鮮人・満洲人・日本人が登場し逞しく生きている様子がわかるが、そればかりではなく著者独特の飄々としたタッチで描かれているため、深刻そうな雰囲気が微塵も感じられず読みやすい。真の戦争体験者はあまり当時のことを語りたがらないものだが、木山捷平もそうだったらしい。木山は特に少女から未亡人まで女性に好かれている。これがほんとなのかどうなのか分からないが、彼女たちとの出会いがこの陰鬱な満洲に華を添えている。2019/06/29
アメヲトコ
3
再び木山捷平。日本敗戦後の満洲長春を舞台にした中編小説。主人公木川は日本に帰れる宛てもなく、五馬路でボロ売りをしながらのギリギリの生活、そして国共内戦が始まり所々で衝突が起きるというシビアな状況ながら、どこか飄々とした空気で物語が進んでいきます。登場する女性たちもなかなかに魅力的。2016/02/12
山一工房
1
くったくないというか、へこたれないというか、ひょうひょうというか。あかるい感じがする。2013/07/29
teachyuba
1
死にたくなったときに読む本。浮き沈みのバランスが絶妙。女が消費されずにしたたかに生きてる本の一冊。
AR読書記録
1
裏表紙に「...強靱な怒りにささえられた庶民の反骨の心情は揺るがない.深い悲しみも恨みもすべて日常の底に沈めて...」などとあります.が,読んでるかぎりそういうリキ入った感じは全然受けませんでした.敗者として敵地のど真ん中にいても,不思議に自然と皆に(特に女たちに)心開かれ慕われ(ときにマンガか!とツッコミたくなるほど),ただふわりふわりと生きているように思える.それはそれでとても心地よい世界です.ただ,解説で実際に著者が経験したらしい過酷な体験の一端が垣間見えると違った印象が浮かびます.深いです.2012/01/28
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