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内容説明
「私的所有」が制度化され、市場経済が発展し、資本主義の秩序が支配する世界は、それ以前の「自然」な状態よりも、おおむね有益である。だがそうした世界は不平等や労働疎外をも生みだす。それでもなお、私たちはこの世界に踏みとどまるべきであり、所有も市場も捨て去ってはならない。本書はその根拠を示し、無産者であれ難民であれ「持たざる者=剥き出しの生」として扱われることがないよう、「労働力=人的資本」の所有者として見なすべきことを提唱する。「所有」「市場」「資本」等の重要概念を根本から考察した末に示されるこうした論点は、これからの社会を考える上で示唆に富む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
8
マルクスというより、ホッブズ、ロック、ヒューム、スミスらの徹底的な読み直し。逆にいえばこれらの著作家はいかに読まれてこなかったかということ。「ロックの考える国家は人の集まりというよりは、土地所有の集まりといった方がよい、そんな風にも見えます…あえて贔屓目に見るならば、社会というものが人間だけでできあがっているわけではない、ということをはっきり見据えた議論である、とも言えます」結末では人間以外の者=ロボットになら「マルクス主義の未来構想」は実現しうる」と述べる。2016/10/03
msykst
6
結論は「無理してでも「労働力=人的資本」を所有可能な財産とみなし、人々をその財産所有者とするべき。福祉国家が保障するべきは人々の生存ではなく、労働力=人的資本の所有者としての権利やで」って事かと。無論こう書くと「ネオリベやな」と思うし、貧困とセックスワークの話とか頭よぎるし、あと著者自身は身体の可塑性に基づく格差拡大(ライザップ?)とかも書いてるけど、でも現状では概ねこれが最適解よねと。ホッブスやロックから根本から所有の概念の論じ直すのは、書名からも明らかな通りマル経(金子勝)への回答だからなのでしょう。2017/02/13
肉欲棒太郎
3
「労働力=人的資本」論とは、端的に言えば新自由主義の論理だろう。絶えざる人的資本の蓄積=スキルアップを要求(せき-立て)する新自由主義社会に対しては、著者に逆らって、断固として「労働力商品化の無理」ならぬ「人的資本化の無理」を主張していきたい。2016/03/16
しんかい32
3
稲葉先生の本はどれもそうだけど、セクションごとの意味はわかっても全体的を貫く問題意識がわかりにくい。「経済学という教養」のときみたいに、他の本でも「なにを主題としているのか」を導入部でもっとはっきり書いてくれると助かるのに。この本の「サイボーグ」とか、『「公共性」論』の「完全な全体性」とか、筋道がわからないままぶっ飛んだテーマへと拉致されるのは、凡人のぼくにはちょっとつらい2010/03/01
ステビア
2
頭フットーしそうになる2013/07/25