内容説明
「他人の言葉に対する寛容は時に、自分が言葉に重きを置かない人の怠慢の証です。怒りを忘れない人は、言葉で戦っている人は、日本に住むあなたの周りにいるでしょうか」「ロンドンの事件の前後にも切れ目なく、イスラエルやイラクからは自爆テロや戦闘による死傷の報道が流れています。昨日もまた、イラクでタンクローリーを使った自爆テロが起き、70人以上が亡くなりました。9・11事件後、世界中を覆い始めた社会の砂漠化が、とうとうロンドンにまで来てしまった。残念ですが、それが実感です」2003年3月、イラク戦争前夜。朝日新聞ヨーロッパ総局長としてロンドンにデスクを構えていた著者から、一通の手紙の形式で原稿が送られてきた。「この手紙が届くのは一カ月後です。瞬時に地球の裏側に電子メールが届くいま、なぜそんな悠長なことを、と思われるかもしれません。ただ私は、そんな時代にこそ一月遅れの手紙が新しい意味をもつような気がします。」以来、2005年7月のロンドン同時多発テロ事件まで55通。歴史や文学作品というフィルターを通しながら、現場の取材と困難な時局の分析を記した本書は、ひとつの時代のかたちを定着させようとする試みでもある。
目次
「予告された殺人の記録」
「情事の終り」
「静かなアメリカ人」
「開かれた社会とその敵」
「百年の孤独」
「正統とは何か」
「荒地」
「すばらしい新世界」
「血の婚礼」
「イングリッシュ・ペイシェント」〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
24
傍観者とはまた、『ベルリン・天使の詩』を思わせる立場だ。だがここで見られる彼のスタンスは決して高みに立った場所から御高説を開陳するだけに留まらず、真に庶民(そしてこう言って良ければ「弱者」)の視点に寄り添うものとして結実していると感じられる。それは彼が自分の正しさに固執せず、むしろ様々な文物(書物や映画)に触れて新鮮な感覚で自分の思考を刷新/ヴァージョンアップし続けてきたからではないかと思う。彼の生き方/書き方はそのまま、一個の運動体のそれとして読めるのではないか。良質なリベラルの知識人が書いた文章に酔う2022/09/18
麺
1
朝日新聞ヨーロッパ総局長として2003年からロンドンに駐在した著者が、自身の日々の取材や現地紙の分析を手紙の形で書き残したもの。著者は「現代にあえて電子メールでなく手紙で情報を伝える意味」を掲げながら、手紙で書き記す対象をその都度背後にある歴史や芸術と関連付けて語る。また、ブレア首相を中心とした英政界に対する所感も楽しい。 いかにもなインテリ臭に鼻白まないこともないのだが、色んなことを知ってるっていいなあ……という単純でポジティブな気持ちになった。2019/08/12
Miyako Fukushima
0
知的度指数100の本。
ここあ1127
0
読了。冒頭の季節の挨拶の美しさが逸品。ここだけでも読む価値あると思う。2013/02/05
satooko
0
久間十義が短編小説のようだと評していたが、なるほどの随筆?書簡?取材日記?-なんとも形容しがたい1冊。物事への接し方・スタンスの取り方など、もう少し若いときに読みたかったと思う。2025/04/04




