内容説明
大正初年の岡山。妾稼業をして両親と妹を養っている珠枝は、金回りのいい旦那から与えられた家で気ままに暮らしている。そこに近在の高等遊民たちが集い、優雅なサロンのような様相を呈していた。しかし大晦日の夜、珠枝は惨殺されてしまう。家ごと焼かれ、後ろ頭の髪の毛と右の耳以外は黒焦げの姿で。「近年稀な大事件」として広がる波紋、妹を通して語られる意外な犯人像。仄暗い場所から語りかけてくるものとは……。岡山で実際に起きた猟奇事件に取材した力作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はらぺこ
31
タイトルからホラーとかミステリーを想像してたからかも知れんけど眠かった。2014/06/24
澤水月
14
耳だけ残して黒焦げに焼け死んだ悲運の美女、この一点から拡がった夢想の数々、詩的で驚き。「岡山での可愛いは、大抵が可哀相の意だ。可愛いものは可哀相だ」「できればあの美しい少年は、姉と同じく明治に逝ったということにしてやりたい。大正も美しいが明治はもっと無残に綺麗だったから」2020/06/22
eipero25
11
犯人探しではない。ホラーでもない。純文学ですかね。 志摩子ちゃんだからといって、エロくてこわーい話を期待してはいけない。 明治から大正へのいい時代を実際に世間をにぎわせた怪事件で表現されてます。2021/06/19
Yu。
10
時は大正初めての新年を迎えようとする岡山市で、無惨な死を遂げた姉を想う妹視点で語られるただの愛憎劇とは一線を画したミステリアスな物語。一見 笑ってしまうタイトルですが、その当時実際に起きた事件をモチーフにした作品で、しかも作者が岩井さんということもあり只事では済まさない内容に早変わり。歪んでる!皆さん歪んでる。「少しは素直になろうよ」と、言いたくなる自己愛のぶつかり合いには読み手を虚実の世界に陥らせてしまう。本作にも負けない辛酸なめ子さんの解説がまた面白い。2014/06/29
あかつや
9
この作者でこの題名なら当然ホラーだろうと思っていたら違っていて驚いた。それにしてもいいタイトルである。「黒焦げ」なのに「美人」とはこれいかに。美人が黒焦げになってしまうのか、黒焦げになっても美人なのか、黒焦げだから美人なのか、といろいろ想像して読み始めた。まあここにさほど深い意味はなかったようだが。ホラーを期待してホラーではなかったのに、そんなに肩透かしを食った気にならなかったのは、この作者らしい岡山な世界観がしっかりあるからだろう。一応オバケらしきものも出てくるけど、別にきょうてくなくても問題なかった。2019/08/07