内容説明
「でこ、今日はちょいと出かけようか」と小津安二郎と行った「お茶の水」、木下恵介が胸ポケットから取り出した一枚の写真、そして美智子妃より思いがけぬ一筆など、大切な人々とのとっておきの記憶を、端正で歯切れのよい語り口で綴るエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
46
一時停止の標識前で一拍の間合い、、横切って行くあの人この人。眼前を行き交うのは越路吹雪さん、黒澤明さん、美智子さま……。センシティブな著者が輪郭に輪郭を重ねて写実する、情趣ある交友エッセイ。人生は“乗り合い”で回りだす、素敵なハンドルだ。◆「にんげん蚤の市」「にんげんのおへそ」に続くシリーズ第3弾2018/09/12
ユメ
38
高峰秀子さんのことは、お名前ぐらいしか存じ上げないという状態で手に取った。よく知らない人のエッセイを読むという行為には、不思議な厳かさが伴い、読み進めるにつれてやがて親しみへと変わってくる。ご自分の交友録を語る高峰さん。小津安二郎監督、黒澤明監督、佐藤栄作夫人、美智子妃…次々と偉大な人々の顔が浮かび上がる中、彼らと対峙した銀幕の大女優の表情も自然と見えてくる気がした。人との思い出を綴る文章は相手への慈しみに満ちていて、高峰さんの真摯さがうかがえる。自らのことを「本喰い虫の病い」と称するのにも親しみが湧く。2017/01/16
りえこ
23
やはり高峰さんの本は面白いです。思っていることをはっきりずばっと言うのが爽快。2013/12/29
ほほほ
19
エッセイ。「にんげん」シリーズ3作目。高峰さんが70代後半、2000年前後に書かれたもの。小津安二郎、黒澤明、木下恵介、淡谷のり子、越路吹雪、ビートたけし、皇后美智子さま、など、高峰さんだからこそ知っている大御所たちの素顔のエピソードを知れて楽しかったです。ファンとの交流や、とても仲の良い旦那さまとの日常生活の話も高峰さんの凛として芯のある人間性がそのまま出ていて読んでいて気持ちがいい。すらすらと気持ちよく読めて、読んだ後は背筋がシャキっと伸びる。高峰さんのエッセイはこれからも読んでいきたい。2015/12/21
mak2014
8
いくつかの雑誌に発表したものを集めたエッセイ集。高峰秀子の作品を読むのはこれで10冊目くらいだが、いつも感心するのは、交友、交流のあった人々の描写の短くも的確なこと。特徴を鋭い観察眼で見極め、切れ味鋭い言葉でスパッと切り取り、サッと目の前に出してくれる。俳優としての役作りと共通するものがあるのだろう。この本では小津安二郎、美智子さま、佐藤栄作の妻寛子さんの印象が深い。たけしのエッセイに出てくる母の描写を読み、自分の養母との関係に思いをいたす「たけしの母と秀子の母」もいい。2016/10/21