内容説明
廃屋に住むじいさんを狙う少年ギャングのおかしくも残酷な企みを描く「廃物破壊者たち」。バーで拾った女と自分の故郷へ旅行にでかけた男の姿が切ない「無垢なるもの」など21の短篇を収録。若島正、田口俊樹、鴻巣友季子、越前敏弥ら当代一流の翻訳者たちが参加した電子書籍版
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
64
「地下室」から心を鷲掴みにされる。両親が留守の中、フィリップは心を躍らせていた。子供が大人の世界を垣間見た時の冒険心が擽られる様子と言ったら!だが畏怖交じりの尊敬を抱いていた大人の情けない姿や自身になる自己保身を認めた時、憧れへの幻滅は生まれ、子供を非情にさせるのだ。子供が「処世術」と呼ばれるものを身に着けるまでの過程、稚気という「無責任」を振りかざす大人の仲間意識の崩壊がシニカルに描かれた秀作。「双生児」は片割れの喪失への理解が物哀しい。「見つけたぞ」の題名の意味も作者の職を知るとゾッとしてしまう。2024/03/24
神太郎
42
21の短編からなる。訳者も複数人のためか入り込める作品からなかなか入り込めない、あるいはなんかよくわからないものもあり、かなりてこずってしまった作品。ただ、グリーンが本当にバラエティ豊かに色々な作品色を出せる作家であるというのがよくわかる。また短編ながら、宗教や、社会情勢を取り入れたものもありグリーンの作家としてのテーマ性なんかも見え隠れするので、グレアム・グリーンという作家を知るには良いかも(でも入るのであれば『第三の男』がベターかと)。好きだったのは「地下室」「ブルーフィルム」「田舎へドライブ」等か。2020/05/09
本木英朗
16
イギリスの小説家、グレアム・グリーンの『二十一の短篇』がこちらである。俺は2005年に一度買って読んでからは、今回は2回目である。だがやはり、今の俺にはちょっと難しかったかなあ。一応、全部読んだけど、どれも途中でわけがわからなくなってしまった。もともとグリーンは「ノヴェルス」と「エンターテイメント」に分類できるといっていたが、この小説はノヴェルス寄りだったと思うよ。それが今の俺には、ねえ。いつかまた読もうと思う。2019/07/14
kenitirokikuti
14
収録の掌編『ブルーフィルム』(1954)を読んだ。50代の夫婦がバカンスでシャム(タイ国)を訪れていた。客引きが「フランス映画を見ないか」という。招かれた先の部屋でブルーフィルムの映写が始まる。一本目はどうでもいい退屈な写真だった。二本目は…それは奇しくも30年前に夫が当時の女と撮られたものだった。残念ながら、妻もそれに気づく。その夜、妻はいつもより興奮した様子を見せる。夫は、かつて愛しただったひとりの女を裏切ったような気持ちになった。。。「ポルノ映画」を扱った小説ではだいぶ早いもの…かな? 2018/05/26
くさてる
13
皮肉なもの、ドタバタ、抒情的なものなど様々な種類の短篇が収録されていて、読み応えあった。「田舎へドライブ」の閉塞感と救いのなさがいまの日本の田舎町に住む女子にも通じるものがあるようで、印象に残った。怖くて切なかったのは、かくれんぼを恐れる幼い男の子の運命を描いた「パーティの終わり」。読む人それぞれにおすすめ作品が分かれるような、面白い短編集だと思います。2015/05/13