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内容説明
「ゆとり教育」は「学力低下」の事実によって追いやられ、「学びのすすめ」へと方針転換された。さて、では「学び」と「教え」との間に生じる関係性、つまり教師と生徒の間の知識伝達の共有は、どのように起こるのだろうか。本書では「わかる」の現象学的な試みを、教育社会学者と哲学者との間で徹底してつめていく。「いま、なぜ勉学をするのか?」という問いかけから、「私」よりも「公」を重んじようという風潮に疑問を投げかけつつ、個人の自由と社会的平等の両方が成り立ちうる地点をめざして、「ともに考え、わかりあう」みちすじを模索・考察する。
目次
序章 教育と社会を哲学するために
第1章 今なぜ「学ぶことの意味」を問い直すのか(「学ぶことの意味」の変遷 個人のさまざまな自由と「学校へ行くこと」)
第2章 「自由な思考」と「知識の共有」は両立するだろうか(個人の自由と公共の利害について 知識とはどういうものか ほか)
第3章 考えあうこと、理解すること(「わかる」を掘りさげる 役割と責任)
第4章 「学ぶ意味」をどう再生するか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
82
最近人気のある教育学者と哲学者による教育に関する問題提起と解決策を探る対談集です。途中で練習問題なども出てきてそれぞれの考え方での解決策もあり参考になります。特に最後の「考えあうこと、理解すること」はさまざまな場所などで話す機会の多い私にとっては非常に役に立ちました。。2015/10/24
Nobu A
9
諏訪哲二著書「間違いだらけの教育論」に導かれ、西研著書初読&苅谷先生著書11冊目。哲学者と教育社会学者の対談だけに抽象的でやや晦渋だが、教育における社会化を西先生がゲームプレイヤーのルール作り直しに喩えたり苅谷先生が教育現場での文脈で分かり易く解説したりと見事な化学反応。諏訪本も理解促進に役に立った。消費社会での教育の意義や教師の在り方が問われる。改めて思う。生徒を社会化出来る教師の研鑚の重要性。教師自身が学び続け、該博な知識を持っていなければ、議論一つ有意義なものへと導けない。再読必要な知的刺激本。2022/07/29
おらひらお
5
2005年初版。教育の目的のひとつとして、自由を享受できる技術を身につけることが挙げられています。職業訓練的な学習ではないものが大学まで延々と続くため学ぶ目的を見失いそうになりますが、本書を通じて大きく補正できそうです。ただ、学びの当事者には本書はやや中小的すぎる面もあります。教員向けの本でしょうか。2014/01/10
izumone
3
「アクティブラーニング」などという言葉が生まれる前の本だけど,通底するものがある。2017/06/09
孤独な読書人
3
「社会に開かれた学び」と「個人主義的な学び」がありこの本が書かれた当時は「個人主義的な学び」という側面が強くなっていたと筆者たちは考え、そのためそのような学び観を修正するために「社会に開かれた学び」という側面を主張した。しかし「個人主義的な学び」を自分の中で確立できない人が果たして「社会に開かれた学び」に参加することができるのだろうかという疑問を持った。2011/06/11