内容説明
ダム建設のため水没する村で、肉親たちが次々と悲劇に見舞われた過去を持つ満水子(まみこ)。そこにはいつも義兄・吉田泉の存在が影を落としていた。満水子の謎が氷解していくにつれ後戻りできなくなる坂本。だが坂本の事実追究の代償は、あまりに大きかった。そしてついに衝撃的な結末が! 傑作恋愛長編、完結へ。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
37
新聞小説らしく、筋の行きつ戻りつが読み手を一層に情炎を感じさせてくれる。高樹さんのチロチロと燃えるホムラすら感じるし。中年男の執拗な性的欲求、ノートぎっしり書き込まれた「浮き上がる村での過去の時間」下巻の濃密さは一気読みさせる。ふと、周囲の社会、世間はそれこそ、ダムの底に沈んでいたのか、あるいは静止していたのかなどバカな事も考えた。現実の世界にこういうもの『あるだろうな』とは思うものの、正直、疲れた・・でも高樹氏のあの表情が浮かびつつ、凄いと唸った。2012/06/20
June
20
下巻はミステリー色が強くなった。水底に沈め隠したかった秘密は、あまりに重たくおぞましい出来事であった。人が隠して触れさせまいとするものを知るということは自らも大きな傷みを伴う。それなのに、わからないものを人は追求したがり、不穏な部分に惹かれてしまう。満水子という女はやはり常人が受け止めるに余る人間だと思った処にまた新たな事実。理解しがたい関係。消えない記憶、告白のような語りが余韻を残す。ダムに沈む村、都会の上水道に不純物が混じらないように、家は全て火葬するきまり、その背景が物語に深みを持たせている。2016/11/24
ヘタ
11
かなり、肉体面から恋愛感情を表現しています。著者が本書を著したのは50を越えていたでしょうか。婚外での恋愛感情を、こうも肉体的欲求から表現するとは、気力・体力共にまだまだ充実していることの証左でしょうか。 また、満水子という、現実にはあり得なさそうな人物設定もちょっと気にかかりました。現実にはあり得ないことをフィクションは見せてくれる。それがフィクションの存在理由の一つでしょうが、満水子の非現実性はあまりいいものじゃなかった。2016/10/07
roco
0
おもしろかった。沼のような水。足をふみだしたらもう抜けられない。底まで沈んでいく。助けたほうも一緒に。下巻ともに一気に読みました。2017/02/25
ポポ
0
なんだか、みな、エゴイストばかりで、共感し難い…。2018/09/04