内容説明
16年ぶりに刑務所の外を歩いた無期刑の囚人。死を間近にして故郷への執念に憑かれた重病人など、人生の重大場面に直面した人々の心理をこまやかに描いた滋味溢れる短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
205
『破獄』や『羆嵐』の吉村さん作品で今さらながら初読みです。う〜ん、深い。とにかく深いです。面白い、面白くないというレベル(次元)ではないんだと感じました。フツーに読書していてもなかなかこういう作品に関わる機会が少ないと思われるので、とても貴重な読書時間となりました。やはり名だたる名作を多数書き上げてる作家さんですから、そりゃあ文体は'重厚'でした。しかし、何がスゴいって時代の古さを感じさせない作りなのが一番驚きでした。短編集ではありますが、一編一編それぞれに深く、濃厚な味わいがあるのは間違いありません。2018/03/11
モルク
87
7つの短編集。刑務官が無期懲役の囚人を仮釈放の準備のため半日社会見学に連れていく表題作「秋の街」16年ぶりに出た街、バスや電車の乗り方、切符の買い方、デパートに寄り貨幣価値の変化を教える。感情を言葉にするのではなく淡々と情景を語る中に自然と感情が垣間見れる。漂流船でただふたり生き残っている船長と船員を描く「船長泣く」では、吉村氏得意の漂流ものだけあってさすがの安定感であり読みごたえもある。これらの短編が「羆嵐」「破船」「高熱隧道」と同時期に書かれたことに驚き。短編ではあるがそれぞれに完成度が高い。2020/06/09
shizuka
60
『秋の街』釈放前の囚人を社会見学へ連れ出す刑務官。事故なく無事に終えたいという張りつめた空気。囚人の心情は刑務官の目を通してのみ伝えられる。2杯目のラーメンを所望し却下される場面。自由まではまだ薄い壁がある。『帰郷』重度の患者を廃屋へ置き去りにするラスト。ある意味尊厳死への問題提議なのかも。患者はそのまま朽ち果てていくのだろうか。想像力が人間の良心を苦しめる。『船長泣く』漂流してしまった漁船。生き残っているのは船長と船員の捨次。寡黙な船長が最後に見せた感情に心がぐらぐら揺さぶられる。吉村氏の手腕光る一冊。2018/01/07
タツ フカガワ
51
無期懲役の囚人が仮釈放を前に、数時間だけ仮出所する様子を刑務官の目を通して描く表題作。高額の費用で末期がん患者を故郷へ送っていった寝台自動車が行き着いた先とは(「帰郷」)。毎日変死体の解剖に明け暮れる青年を描く「雲母の柵」など、一編20~50ページほどの短編集(全7話)ですが、どれも濃密な作品で、そこに描かれる「死ぬこと」「生きること」の苦悩が生々しい。久しぶりの吉村作品でしたが、圧倒されっぱなしで読了しました。2022/03/17
kinkin
46
6篇の小品。氏の著作には「長英逃亡」や「ふぉんしぃふぉるとの娘」という大作と、小品ながらも人と人のかかわり合い、対自然、対動物等、主人公が置かれる状況も様々で、いつも綿密な取材や資料を元にされている。この書に収められている「船長泣く」のように漂流を題材にしたものが多いが、そこに描かれるのは、極限に至るまでの心の変化、そして絶望と希望、死との対峙である。吉村昭の目はいつも感情に振り回されることなくあらゆる対象を善悪分け隔てなく書いている。題材は古くとも長く読み続けられることの理由のひつではないかと思う。 2015/01/03
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