内容説明
法医学の権威宗像隆一郎博士が探偵事務所を開設して数年。難事件を次々に解決して英名天下にあまねく轟き、かの明智小五郎に比肩するばかりであった。ある日のこと、博士の助手木島が予告殺人の犯人に関する手掛りをもたらし、彼自身も毒を盛られて死ぬ。予告された犠牲者は川手庄太郎、妙子、雪子の父娘。木島が携えた証拠品とは、三つの渦巻が相擁する世にも稀なる指紋であった。弔い合戦に臨む宗像博士を敵に廻し、悪魔の証三重渦状紋の主は観念の眼を閉じるのか。終盤に至って名探偵明智小五郎が京城から帰朝、長広舌を以て披露する明快な論理が、残虐飽くなき復讐魔に引導を渡す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
137
★★☆☆☆ 明智シリーズだが、明智探偵は終盤にちょろっとだけ出てきてさっさと事件を解決してしまうだけの役割。 乱歩作品の愛読者であれば序盤で犯人の予想が付いてしまうだろう。またエログロ描写は乱歩にしてはかなり控えめで、そのためミステリとしてもスリラー小説としても特筆する点があまり無くなってしまった。 ラストもあまりスカッとしないので、お薦めの作品とは言えない。2020/04/06
セウテス
95
〔再読〕川手氏の元に、脅迫状が届く。明智小五郎に助けを求めるが海外に出張しており、代わって法医学の宗像教授が担当する事になる。脅迫者は、過去に両親を殺された恨みを晴らす為に、川手氏の一族を全て殺害すると言ってきたのだ。明智小五郎の留守を守るべく宗像教授は奮闘するが、再三に渡り脅迫者に裏をかかれてしまう。実は江戸川乱歩作品を良く読まれている読者には、本作が「蜘蛛男」の焼き直しと言うべき作品である事が、解ってしまうと思う。よって、必然的に犯人も解って仕舞う事になるだろう。見所は、ラストの明智の掛け合い問答だ。2018/10/15
犬こ
26
悪魔の紋章は、かつて小林少年探偵団の方で読んだと思うのだけれども、全然覚えてなかったです。本作は、あの乱歩節は少し薄かったかな。他感想にあるとおり、犯人が途中で分かってしまったのは、みんな一緒か(苦笑)乱歩だから、よしとします。2016/06/05
旗本多忙
24
人を殺すってのはどのような理由があろうと許されるものではない。しかし当事者とすれば腸の煮えたぎる思いで不倶戴天の敵を討ちたい。遠い過去に父母を殺され、犯人はその一族を根絶やしにするまで執拗に追い詰める。ストーリーの内容、いや犯罪の手口は、この作品以外にも度々出てくる。勿論変装とか密室から人が居なくなったりとかだが、しかし乱歩読者は序盤から、ふふん成る程とわかるであろう。しかし、われわれは明智の決定的推理が聞きたいのである。完全無欠とは明智の推理かな(笑)面白い!2017/08/31
coco夏ko10角
22
内容紹介で「もしや…」となり読み始めて「やはり…」とまたこのパターン。自註自解で乱歩も書いてるからやっぱり好きなんだな。犯人がわかってても面白いのはさすが乱歩。作品雰囲気を楽しみたいのが一番だからいいんだ。2017/11/03