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内容説明
明治十九年、徳富蘇峰は二十三歳で、評論『将来の日本』を著して華々しく論壇にデビューした。その後、藩閥政府への参画を「変節」と誹謗され、戦後は第二次大戦中の言動によって無視されつづけた。しかし蘇峰は、青年時代から一貫して、日本が国際社会から敬意ある待遇を受けることを主張してきたのである。本書は「大言論人」蘇峰の生涯をたどり、日本ナショナリズムの転変に光を当てるものである。
目次
第1章 新世代の「青年」の誕生
第2章 平民主義のリーダーとして
第3章 「膨脹」への意欲―日清戦争
第4章 「世界の同情」をもとめて―日露戦争
第5章 「白閥打破」から「亜細亜モンロー主義」へ
第6章 閉塞するナショナリズム
終章 ナショナリズムの「再生」―第二次大戦後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
29
最初は生涯ジャーナリストとして明治維新の頃から第二次大戦後まで95年も生きた徳富蘇峰氏への興味で読み始めましたが、内容は明治維新期の志高き少年が常にベターな選択をし続けた結果、老いてナショナリズム思想に染まっていく経過を辿るもので、長く生きるということは愚かなことだなーと読後、遠い目になりました。それでも彼が長く生きたことで成し遂げられた偉業は数知れず、死ぬ直前まで読書を楽しんでいるお姿を記念館で見たときにこんなふうに生きることは素敵なことだなと思いました。短い頁数ながら深く考えさせられる読書でした。2020/08/29
Tomoichi
14
徳富蘇峰という名は知っていても何者かを理解せずきた。本書は蘇峰の生涯が追いながら副題の通り近代日本のナショナリズムの軌跡をたどる。今という神の目から語られているのは非常に残念。日本の近代ナショナリズムは遅れて近代化し黄色人種のアジア人という日本人が負った悲劇の歴史である。蘇峰を批判するのは容易い。しかし彼が負った悲劇を誰が笑うことができるだろうか?2017/07/24
かんがく
11
やはり長生きした人物の評伝は面白い。幕末に生まれ、同志社で学び、自由民権運動に身をおき、政府の貴族的欧化主義を批判して平民主義を唱えて『国民新聞』を創刊、三国干渉以降は対外膨張を主張し、松方や桂などの政府と提携、日本の戦争に言論人の立場から協力して戦後は戦犯にも指定される。徳富は膨大な著書を書いているが、この本の著者はその多数を収集しているため、豊富な引用によって彼の思想の流れがわかりやすい。2018/08/17
無識者
11
自分には合わない人だろうなと、避けてきたわけだけれども、読んでみたら、わりと面白かった。少しでも日本の地位向上のために、努力を惜しまず、自ら筆を振るうエネルギーにはかなり熱いものがある。その熱はおそらく多くの人たちに共有され影響を与えたのだろう。それはプロパガンダの一翼を担ったというよりかは、啓蒙を施したという側面が強いだろう。//彼に近い立場の思想に触れる機会が全くと言っていいほどなかったのでちょうどよかった2016/12/21
バルジ
6
近代日本の代表的なジャーナリストである徳富蘇峰をその言論から日本ナショナリズムの代表的な軌跡として描き出す。 著者の蘇峰評は後半に進むにつれ辛辣さを増す。殊に対象以降の評価は極めて厳しいものである。平民主義から亜細亜モンロー主義まで蘇峰の鋭敏な知性は常に時代を先取りし世論に自らを「順応」させていく性質があった。この性質が災いし戦後は逼塞を余儀なくさせられるが、戦後は日米友好を説く変化を見せる。見方によっては無責任極まりない言論人として映るであろう。しかしその振り幅ある言論は近代日本の縮図と言えるであろう。2019/09/15
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