内容説明
「“どうだ、どうだ”胸元や腹をくすぐりまわした。男同士だと、ちとややこしい事態になりかねないが、男とオスだと何でもない。それでも多少はここちいいらしく、相手は目を細めたりしている。あるとき、うとうとしていたら、やにわに胸の上にのられ、熱い息を吐きかけられた」。無口な友とは誰か? どんな交流があったのか? さいわい人間ではなかった――「吾輩は犬である。名前はチャンプ」――「庭の隅に大きな穴を掘って葬った。いっしょのしるしに、冷たい鼻先にわが使い古しの万年筆をくっつけた。チャンプを失って、私はこの人生、もうそろそろいいかなと考えるときがある」。『遊園地の木馬』『なじみの店』につづく三冊目のエッセー集。先生の本棚にあったカフカ初版本の行方から田中康夫県知事の魅力、死と死者をめぐる省察まで。時の流れに沿って、いよいよ深みを増した名人芸の醍醐味。
目次
1 夢の建物(眠りの王様 悲願の一勝 ほか)
2 無口な友人(らくだ賛 駒さばき ほか)
3 わんぷらいすしょっぷ(西川町岩根沢 黄と青 ほか)
4 紙の墓碑(人体=袋説 宗十郎の死 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
^o^っpe
1
40歳以降4ー5年毎に新しいことを始めていて、自分の居場所を常に作り出して楽しんでいていいなぁと思う。銀行頭取、主治医にして薬局主人、山登りの人兼銭湯の客、さらにドイツ人すら兼ねているのに、1日は1分刻みでなくきちんと1日刻みで過ぎていく「万年新入生」が楽しい^o^2015/10/20
あきこ
1
エッセイなので楽しく読んだ。表題の「無口な友人」犬のチャンプには共感し、その姿が眼に浮かぶようであった。また、その散歩コースが我が家にとびきり近かったので、あやうくチャンプの姿を捜しそうになったりした。しかしチャンプはもういないのだ。そんな普段の姿の作者の気持ちに寄り添えてよかった。2011/05/11
ヤボ
0
★★★★★
まぐろかずのこ
0
なんとなくタイトルに惹かれて読んた。文学に限らず、日本人の生活について、忘れてはいけない流れがあるのだな。2020/01/11