内容説明
建仁寺の小坊主一休に、奇妙な依頼が舞い込んだ。金閣寺で首を吊った足利義満の死の謎を解けと言うのだ。現場は完全なる密室。が、権勢誇る義満に自殺の動機はない…。一休は世阿弥らの協力を得て推理を開始、辿り着いた仰天の真相とは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
123
本書はまさに掘り出し物だった。メインの謎の解明に有名な一休のとんち話を巧みに絡めて、それを推理の手掛かりとして有機的に結び付けるという離れ業をやってのけている。さらに威丈高に振る舞う武士や侍たち、現将軍足利義持、それらを凌ぐ圧倒的な権力を誇る足利義満という絶対的君主が憚る権力構造の中に、まだ弱冠15歳の一休が知恵と勇気と度胸で切り返す、反権力主義の姿勢が今読んでも痛快で、実に気持ちがいい読み応えを与えてくれている。また貴方はなぜ「大」文字焼きなのか、ご存知でしょうか?その答えは本書を読むと解ります。2018/07/25
たか
55
金閣寺の最上層の密室で、室町幕府3代目将軍・足利義満が首吊り死体で発見された。この死の謎を解き明かすのは、あの小坊主・一休さん!脇に従えるのは『しんえもんさん』こと検使官の蜷川新右衛門と世阿弥の二人。 設定もさることながら、謎の解明の過程で『この橋渡るべからず』や『屏風の虎退治』など、有名なエピソードを巧みに採り入れる手腕が実に見事で、ニヤリとさせられる。 五山の送り火の『大』文字焼きには、そんな意味があったのか!と妙に納得。いろんな意味で、理屈抜きで楽しめる作品だ。B評価2021/11/01
はらぺこ
46
アニメと設定が違うのでアニメを懐かしんで読むと失敗する。一番違うと感じるのは一休さんの言葉。京都弁(?)を喋ります。当時の京都人はどんな言葉を話してたか知りませんが、京都育ちやったらアニメみたいな標準語より方言の方が正解なんでしょうね。違和感あるけど(笑) 足利家が脇役の作品を今まで何冊か読んだけど、ここに出てくる義満もイヤな感じでした。シュッとした足利の話って無いんかなぁ。 先に『邪馬台国はどこですか?』のシリーズを読んでると「おーっ」て感じで少し嬉しくなると思います。2011/09/04
ヨーコ・オクダ
36
昔、アニメで見た一休さんのエピソードがいろいろ出てきて懐かしい〜と思いながら読んでいてふと気付く。コレ、実はスゴい!単なるエピソード紹介ではなく、鯨センセの描く本筋の重要なカギになるように自然と組み込まれていて…。金閣寺内の密室で首をくくった足利義満。彼の性格、時の政情からして自殺はあり得ないという。では、誰に殺されたのか?密室を作り上げ、厳重な警備陣からどうやって逃げたのか?一休チーム(新右衛門&茜)に世阿弥が協力して調査を進めつつ、真相に迫る。ユーモア推しの場面、緊迫した場面がバランス良くミックス。2020/11/17
とも
28
★★★★足利義満の死が自殺か殺人かを、一休さんが読み解く歴史推理小説であるが、鯨流の歴史解釈が盛り込まれた一冊。なかでも義満の天皇家を乗っとるくだりは、井沢元彦の「天皇になろうとした将軍」をあいまって楽しめる。2015/09/02