内容説明
千九百四十九年も押し詰った鬱陶しい日の午後、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。トランクに詰められた男の腐乱死体。荷物の送り主は福岡県若松市近松千鶴夫とある。どうせ偽名だろう、という捜査陣の見込みに反し、送り主は実在した。その近松は溺死体となって発見され、事件は呆気なく解決したかに思われた。だが、かつて思いを寄せた人からの依頼で九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、アリバイの鉄の壁が立ち塞がる……。巨星、鮎川哲也の事実上のデビュー作であり、戦後本格の出発点ともなった里程標的名作。綿密な校訂による決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
407
中学生時に、角川文庫版を何度も挫折。文章が堅く感じられ、地名が全然頭に入ってこなかったのが理由で、読み切るのに相当時間がかかった記憶がある。有栖川氏の、過剰なまでの宣伝文句につられて再読する気になったが、改めて読むとたしかにとんでもない本格ミステリ。錯綜する謎を、きれいに一つずつ分解して、順番に解いていく過程の面白さと、トリックが瓦解するきっかけの作り方が、鮎川氏はユニーク。登場人物を少なくするために、関連性に若干都合の良さが出てしまっているくらいが難点で、職人芸というにふさわしい作品。2018/04/06
Kircheis
390
★★★★☆ 巨匠鮎川哲也の実質的なデビュー作。 ずっとクロフツの『樽』を意識して書かれたものと思っていたが、実は横溝正史の『蝶々殺人事件』を読んだのがきっかけだったと語られていてビックリ! 2つのトランクと死体が絡むアリバイトリックに鬼貫警部が挑む話。トリックの基本線は鬼貫より先に見抜くことができたが、鬼貫がラストで気付く真実には思い至らなかった。 今となっては古典だが、戦後すぐの時代にこんな大仕掛けのトリックが編み出されていたことに尊敬の思いである。2023/07/16
修一朗
116
クロフツの「樽」を読んですぐに読もうと思ってたのに時間が経ってしまった。2024年鮎川哲也賞作を読んだのでこの機に。直接時刻表や地図が貼ってあって適宜主人公が時系列を整理して提示してくれたりするところが昭和な本格推理小説の雰囲気だ。時刻表ダイヤを駆使したトリックで構成されている昭和正統派,複雑で読むの大変だけれどもそれが楽しいのだ。緻密な計画的犯行とその謎解きを堪能しました。地名蘊蓄ネタもたっぷり。あちこちの別府・高松に輪島(塗と宇和島(塗,面白かった!この夏は昔の名作をもうちょっと読んでみようかと。 2025/08/07
五右衛門
90
読了。初読みの作家さんでした。少し時代を感じましたがそんな事が全く気にならないくらいの推理、構築しては崩してからの再構築にのめり込みました。事件解決までの推理見事です。途中まで絶対に崩されないだろうなと思っていたアリバイをものの見事に崩して行くくだりはもの凄いスピード感で読まされました。面白かった❗2019/02/24
aquamarine
81
再読。初読のときはよくわからず、後に光文社文庫版の解説の図とにらめっこしたのを思い出します。この創元版は会話などにも手が入っているのかとても読みやすくあれほど難しかった人とトランクのルートが今回はちゃんと伏線があることも気づけて素直に読み進めることができました。ひとつひとつ足で稼いで真相を明らかにしていく過程は本当に細やかでもつれた糸が綺麗に解ける様は感動します。でも事件の関係者がもともと警部の関係者ということもあり、心に響いたのは犯人との対決シーンと独白。ただのアリバイ崩しだけじゃない読後感も好みです。2015/11/11
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