内容説明
ブルトンとバルトンシャイティスを結びつけ、美術史の大転換を図った澁澤龍彦の記念碑的名著!「さまざまな要素から織りなされたこの「研究ノート」は、いずれにせよ澁澤龍彦の原点を構成する。その後の澁澤の展開を萌芽的に含み、しかもそれをある程度予告するものと見てさしつかえあるまい。(谷川渥「解説」より)」
目次
悪魔像の起源
悪魔の肖像学
冥府とアポカリプス
最後の審判
地獄と刑罰
コントラ・トリニタス
ドラゴンの幻想
誘惑図
死の恐怖と魅惑
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
275
「はしがき」によれば、これらの記述は著者が33歳の頃の、いわゆる「若書き」とのこと。なかなかどうして堂々たる内容、既にして恐るべき博識ぶりだ。タイトルには中世とあるが、古代から現代に至る悪魔、及びその周縁(ドラゴンだとか、地獄だとか)の、つまり反キリスト的なものの図像学史といった内容。美が規範の上に成立しているのに対して、恐怖(これが悪魔を生む)は、無秩序と過剰のうちに成立するというのは、澁澤ならではの見事な卓見だ。虚無には際限がないのだから。ただ、肝腎の図像が暗いモノクロームで良く見えないのは残念。2013/02/12
ケイ
125
著者の悪魔や地獄への思い入れがよくわかる。これを書くまでにどれほどの文献を読み漁ったのだろう。しかも連載であったというのだから驚く。悪魔は古代においては今ほどグロテスクでなかった。時代とともにその要請に応じて変化してきたようだ。まず、紀元1000年を迎える前の終末的思想、 宗教改革においてなど、悪魔が強調される必要があったのだ。作者同様にのめり込むには、白黒の文庫では詳細が全く分からず、本来のハードカバーの形で、もしくはA4サイズの画集で絵画を確認しながら読むべきだと思った。2016/06/06
Gannet
33
(再読です)悪魔が登場する美術作品のエッセイです。沢山の作品について書かれてますが、文庫なので参考写真も少なく画質も悪いのでそのまま読むとちょっと辛いです。今回はネットで画像を探して悪魔芸術を堪能しながらじっくり読んだので、とても面白かったです。初期キリスト教では悪魔の姿も単純で地味でしたが、13世紀頃から東洋美術の影響も受けて15世紀にはバラエティーに富んだ恐ろしい姿の悪魔芸術が花開きます。1563年トリエント宗教会議で乱れた悪魔の画像が禁止され、次第に減少しました。→2021/06/01
姉勤
28
漆黒の全身、大きく裂けた口と牙、ツノか触覚をいただき、コウモリ上の羽根、長い尾…典型的悪魔の姿を中世ヨーロッパに尋ねる。 蛇、魚、獣、そのハイブリッドのキマイラ。ガチガチのキリスト教世界だからこそ表現できる、アンチクライストのエネルギー。旧世界の神々、東方や古代からのイメージを借りてひた隠した内面を映し出す。悪魔と称するに相応しい、タガが外れた時に起こる人間の凶暴性。そして死への恐怖。著者の膨大な知識をパッケージングする力量に、置いてきぼり。2015/11/04
双海(ふたみ)
20
図版が豊富で楽しい。暗黒のやすらぎ。2015/04/19