内容説明
妻子を得て春陰にたたずむ望(ぼう)の胸中には、焦燥あるばかりであった。周公を中心に諸侯は策謀しつつある。しかし独り時代の先を視る望の苛烈な生は、人知れぬ哀しみにみちていた。ひとは己れを超えねばならぬ、あたかも小魚が虹桟(こうさん)を渡り竜と化するように。利に争うものは敗れ、怨みに争うものは勝つ、そしてそれを超えるとは? 遊牧民の子が、苛烈な試練をへて、商王朝を覆滅する雄渾な歴史叙事詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
63
中巻ではいまだ望の望みはいまだ実現の機運も見せずにいます。めとった妻も亡くなってしまいます。商王朝の王は酒池肉林といった言葉の通りに悪辣に描かれています。宮城谷さんはそこらへんを描くのがうまく、またさまざまな警句の様な言葉も主人公の胸の内という感じで入れてくれるので参考になります。2015/05/16
著者の生き様を学ぶ庵さん
37
恭賀新年。新春初読みなり。望は一男一女を授かるも、愛妻・逢青は急逝す。紂王は未だ妲己に惑はされず。妲己は有蘇氏・蘇忿生が娘にして、未だ傾国の美女「妲己」に進化せず。如何にして所謂「妲己」に変化せるか、怖いもの見たさなり。2016/01/01
たみ
22
二十代の望、妻を亡くし子を残して去り賈人となる。商の受王へ謀反をたくらむ人の話を聞いたり拠点作りと情報交換と人脈作り、羌族が生き延びられる方法を模索する。仲間のおでこを指でチョンと押してみたり「あの女性を〇〇(仲間の1人)の妻にどうかなぁ」と言ったりする望、相手の仲間に(エッあの女性はあなたが好きですヨどう見ても…(;・`д・´))みたいに思われていて愛嬌を感じます。仲間の結束が固い。後宮で不遇を強いられている妲己愛くるしい、望が惚れるのも無理ないなぁと…。…。…惚れ!? 彪も気になるし、下巻へ急ぐ!2016/03/07
またべえ
20
国がたくさん出てくる。絶対的権力を握っているのは商だけど、鬼とか、鄂とか、向とか、何とか。おまけに人の名前も大概一文字なのであります。ウーン、ムズカシイ。そもそも、果たしてこれはいつ頃の話なんだろう?太公望のこと、ほとんど知らないので、見当がつかない。小説「太公望」の中に手掛かりとなりそうな記述が少ないのです。商なんて言う王朝が中国にあっただろうか。周と言う聞いたことがある国が出てくるので、何となくあの王朝かなとも思いますが、悔しいのでネット検索はしないでおきます。2019/03/24
ニケ
17
文庫だから持ち歩きやすいと思うのに、家で一晩で読んでしまった。ちっともじっとしてない登場人物たちを追ってるとあっという間。配下の望に寄せる思い(信仰?)に胸がほんわかする。配下達と望の、お互いにちゃんと通じた会話が羨ましい。「望がどれほど愁えているかは、ふたりに通じない。つまり、ふたりはそれぞれ、望とはちがう道を歩いている。望がふたりをそちらの道に追いやったわけではない。自分で選んだ道だ」自分の手で守れないことを知るって苦しい。でもそれぞれの生き方を認めるって、その苦しさを飲み込めるようになることだよね。2015/08/26