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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
347
前篇から時間を置いて書かれたのだろうが、後篇では小説作法において、いくつかの点で長足の進歩が見られる。前篇でも往々に物語の複線化が図られていたが、それらは本来のキホーテの遍歴とはやや別の事柄として語られていた。ところが、後篇においては、こうしたエピソード群が主旋律と有機的な関連を持った中で語られるようになった。そして、もう一つの大きな変化はサンチョ・パンサの造形的な成長である。もはや彼は従属的な従者ではなく、物語の中の比率においてはキホーテと対等な位置に立っているとさえいえる。「語り」もまた各段の進歩だ。2016/04/25
ハイク
121
相変わらずのドン・キホーテは面白い。言わば楽天家であり妄想や夢想で行動する人物である。彼の愛する姫の「ドゥルシネーア・デル・トボーソ」に会いに行く所では、完全に妄想である。その妄想に拍車をかけたのが、従者のサンチョ・パンサである。第1巻では彼らの行動はドジばかり踏んで、おぼつかない旅であったのが、第2巻では自信にみなぎる行動をするようになった。サンチョもまた然りである。道中であったライオンを運ぶ人と出会い、ドンキホーテがライオンと戦おうとする際、彼の恐れを知らずの振る舞いは、第1巻とは大違いであった。 2017/02/24
やいっち
93
意図的なのか後篇になって物語の……あるいはドン・キホーテらの性格……もっと言うと描き方が変質した気がする。ドン・キホーテの狂気ぶりが先鋭化してる。類い稀な記憶力と(独特な)知性に磨きがかかり、一方 尋常じゃない狂気……疑うことを知らない思い込みの頑なさとの両立 それとも緊張感ビンビンの屹立が物語の面白さを際立たせている。正気とは何か、何があなたの正気を保証するのか、社会の認知以外に正気は正気足りえない。箍を外してはいけない。2021/07/17
扉のこちら側
88
初読。2015年1145冊め。【78-4/G1000】思ったほどにはドン・キホーテが突飛ではなく(前編比)、サンチョも饒舌になって印象が違う。前編があまりにヒットして、この後編を執筆中に偽作家による後編の贋作も出たというが、ドン・キホーテの物語というよりも「ドン・キホーテの物語を読んだ人々の物語」になるのかな。【第2回G1000チャレンジ】2015/11/21
藤月はな(灯れ松明の火)
81
後半はメタ的ツッコミと逆転劇による滑稽味が炸裂!ドン・キホーテの法螺を無垢に信じて再び、旅に出ようとするサンチョに対し、ドン・キホーテはありのままの現実が見えてしまう。しかし、彼は周囲の思惑に沿って一度、信じてしまった法螺を叶えるしかないという立場の逆転はえぐみのある滑稽さを生んでいるのだ。また、当時、ドン・キホーテをモチーフにしたパロディや二次創作などが多く、執筆された為、公式のドン・キホーテの口を通して作者直々の「それ、違うから!」というツッコミが繰り出される。まさかの公式からの否認に笑うしかない。2021/07/25