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内容説明
ゆたかな自然に懐深く抱かれた聖地,熊野.「蟻の熊野参り」という言葉どおり,人々は何かに引きつけられるように苦しい巡礼の旅を続けた.中世の記録から,上皇の御幸や一般庶民の参詣のようす,さらに熊野信仰の本質,王子社成立の謎等にせまり,長年の踏査経験をふまえて,この日本随一の古道の魅力を語り尽くす.
目次
目 次
序――熊野とはどういうところか
Ⅰ 熊野詣の中世史
1 山林修行の地として――永興禅師そして宇多・花山法皇
2 院政期の大流行――上皇・女院そして貴族たち
3 『中右記』にみる貴族の参詣
4 藤原定家が記した上皇の参詣
5 地方の武士が主役に――承久の乱以降の変化
6 北野殿熊野詣日記を読む
7 「蟻の熊野参り」――活発化する民衆の参詣
Ⅱ 参詣の作法と組織
1 熊野信仰とは何か――参詣の目的
2 道中の案内と宿泊――先達と御師
3 九十九王子とは何か
4 「浄・不浄を嫌わず」――女性・障害者の参詣
5 苦行滅罪の旅
6 近世の到来と熊野詣
Ⅲ 熊野古道を歩く
1 参詣道の現況と歩き方
2 紀伊路――中世の公式ルート①
3 中辺路――中世の公式ルート②
4 雲取越と潮見峠越――中辺路の派生ルート
5 高野山からの小辺路と海のみえる大辺路
6 石畳の立派な伊勢路
7 大峯奥駈道――厳しい修行の道
主要参考文献
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
97
伊勢神宮、那智の滝は行ったことがある。熊野古道を歩いたことはない。近所には年間雨量がすごい大台ケ原。いつかは行きたい。p129「古道歩きには二通りある」「スポーツ派」と「歴史派」。大台ケ原と合わせて訪れる自然派というのもあっていいのではないだろうか。主要参考文献が膨大。岩波新書一覧 http://bit.ly/12LkZWe2013/06/13
そうたそ
12
★★★☆☆ 熊野三山を訪れたこともあり、その復習も兼ねて。熊野詣での歴史から始まり、探索の案内等と熊野古道に関するあれやこれやを気軽に知ることができる一冊。浅く広く、といった感じの内容ではある。観光ガイドではないので、あくまで副読本的に読むのがいいのかもしれない。ざっくりとした知識を得ることはできたと思うが、思ったより内容に深みはなかったかも。2022/12/25
寝落ち6段
11
大学1回生の時、友達と南紀白浜に泊まり、熊野古道の中辺路を歩いて、熊野大社に行った。深山幽谷、風光明媚、青々とした山に薄い霧が立ち込める、息を吸うと肺腑に神聖な何かが溜まるような気持ちになった。苦労して参詣することが、自然を体一杯に感じられ、自分も自然の中で生き、自然に生かされているのだなと悟れる修行なのかもしれない。大変、貴重な体験をしたと思う。この本を買ったのも、その時で、この本に感化されて参詣した。持参したので、湿気で少しふやけてしまっている。思い出深い本。2021/04/29
クナコ
10
初読。GWに熊野三山観光旅行へ行くので。旅行先の基礎知識が得られれば、くらいに思い読んだものの、予想以上に学術的な内容で読むのに時間がかかった。熊野古道がもともと修験道者のための道であることは承知していたが、奈良時代から続くものとは恐れ入った。また時代を追うにつれて、修験者に限らず、天皇・上皇など含む貴族や武士、庶民まで訪れる参詣先になっていったというのも興味深い。本書執筆時の1999年には古来の道は道路整備や開発で寸断され、昔ながらの巡り方はできなくなっているという。そこもまた諸行無常なのだろう。2024/03/26
かみしの
8
中世の熊野参詣の歴史や信仰について、数多くの資料・文献を用いて紹介した本。後半には熊野古道の散策記も載っている。非常に良くまとまっているので、資料として研究の一助にはなると思うが、読み物としてはあまり面白くない。あとがきには「隠国」「死の国」としての熊野のイメージをあえて排除した、とある。そこが一番面白いのに、と思う。2013/08/11