内容説明
哄笑をかうサンチョ・パンサの愚鈍ぶりとドン・キホーテの妄想――真作『ドン・キホーテ』の終わり間近になって偽者が本物ドン・キホーテの遍歴修業の行程を変更させてしまうなど、多大な影響を与えた謎の贋作。真作と比較して読む楽しみを与えてくれる、17世紀スペイン黄金時代の文学史に振動を起こした作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
還暦院erk
6
図書館本。ごめん飽きた、と作者に言いたい気持ちをこらえつつ読み進める…だって主従の言動と周りの反応がワンパターンなんだもの。サンチョの諺開陳も少なくなるしイジメ的なやり取りもあるし…セルバンテスは本書を読んでムカついたから逆に後篇のサンチョを少し知的に描く方に軌道修正したのかも、なんて妄想。さて、アベリャネーダ版ラストではドン・キホーテは死なない。終章で登場する某狂人のキャラが意外にリアルで面白かった。モデルの人物が居る?主人公の魅力は最後まで正直イマイチ。騎士道物語ヲタク駄目絶対って啓蒙には効果的かも。2023/06/12
ヴィオラ
4
ドン・キホーテを読もうと思うまで、その存在を知らなかった一作。セルバンテスがドン・キホーテの後篇を出版する直前に世に出すという、今の感覚だと酷い話だけど、当時著作権の扱いはどうだったんだろう?「贋作」っていうから、さもセルバンテスが書きました的な姿勢かと思いきや、序文からあからさまにセルバンテスに喧嘩売ってるのがおかしい。作者の正体はいまだに分かっていないそうです。 キャラの性格とか微妙に変わってるんだけど、(原書で読むとまた違うのかもしれないけれど)翻訳で読む限りそんなに違和感はなかったかな?2016/08/26
maqiso
2
ドン・キホーテとサンチョの言動の極端さが繰り返されるの面白い。ラストはあっけない。真作への悪意はだいぶ感じられる。2021/09/04
おとや
2
ドン・キホーテがサンチョと引き離され、癲狂院に幽閉されるラストは衝撃的。巻末の解説にもあるが、本作のキホーテの行動は、単に妄想に捕われて既存の騎士道小説の展開をなぞっているだけであり、セルバンテスの著作にあったようなユーモアや独創性は見られない。セルバンテスが「後篇」で「前篇」より一歩進み、メタ小説とも言うべき境地を切り開いたのに対し、本作は結局「前篇」の枠内から出られず、しかも質も「前篇」より悪いという作品である。が、凶暴なキホーテと粗野なサンチョにも、セルバンテスのキャラクターの半分ほどは魅力はある。2013/04/23