内容説明
豊臣政権の中枢に喰い込んだ施薬院全宗の野心と乱世をダイナミックに描出した傑作長篇を初電子書籍化。
時代歴史小説の旗手として注目を浴び、着実に秀れた作品を発表し続けている著者の傑作である本作品は、甲賀出身で比叡山に学び、師・曲直瀬道三を踏み台に豊臣政権の中枢に食い込み、秀吉の筆頭侍医となった施薬院全宗の生涯を描く。竹中半兵衛、黒田如水、石田三成らの名だたる側近に伍し、天下統一、世継問題に重要な鍵を握った隠し名参謀の野心と乱世が見事に描出されて、吉川英治文学新人賞候補となった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
32
豊臣秀吉の筆頭待医であった施薬院全宗の生涯を描いた大作。火坂氏の初期の作品はとても重厚で読み応えがあり、切り口も新鮮。武田信玄の病状を調べに行く場面など鳥肌もの。また、このような名作を是非とも書いていただきたい。2010/12/14
星落秋風五丈原
9
人たらしの異名を持つ秀吉のまわりには、入れ代わり立ち代わり側近が現れるがそんな中で秀吉の第一の側近として権力を持ち続けた施薬院全宗。彼はいったいどんな生い立ちだったのか?本書では、全宗が、家柄も金もないゼロの所から、学んで得た薬の知識を元に栄達の道を昇ってゆく様が描かれる。生臭い事をしている割には、嫌な感じはしませんでした。「黒衣の宰相」の主役金地院崇伝に比べると、ぎらぎらした野心が薄いように見えます。スタートが40半ばと遅かったせいか、時に余裕すら見える。甲賀忍び出身の全宗と敵とのバトルシーンあり。2007/05/31
藤枝梅安
5
甲賀の里で忍びとして鍛えられ、薬の知識を父から授けられた少年が母の二人目の夫を殺害、忍びの掟をも破り流浪の末、比叡山・薬樹院の全宗として世に出、有力武士の参謀として権力を揮うまでにいたる物語。実在の人物・施薬院(やくいん)全宗の一生を史料を丹念にあたって記している。16世紀末の、いわゆる「戦国時代」には、それぞれの立場で書かれた「覚書」が数多く残されており、立場・見方により「歴史」はいくつもの側面を持つ。2010/01/19
須那 雄太郎
1
津山市立図書館2022/07/22
花凛
0
己を下等とみなした上での野心剥き出しな姿はある意味好感。 歳の差ロマンス削っていいからもっと色んな人への診察シーンが見たかったなぁ。躍動感溢れるストーリーだっただけにそこが残念。2016/07/19