内容説明
始まりは、各種メディアに届いた『メルヘン小人地獄』だった。それは、途方もない毒薬をつくった博士と毒薬の材料にされた小人たちの因果を綴る童話であり、ハンナ、ニコラス、フローラの三人が弔い合戦の仇となって、めでたしめでたし、と終わる。やがて童話をなぞるような惨事が出来し、世間の耳目を集めることに。第一の被害者は廃工場の天井から逆さに吊るされ、床に「ハンナはつるそう」という血文字、さらなる犠牲者……。膠着する捜査を後目に、招請に応じた名探偵の推理は? 名探偵史に独自の足跡を印す、斬新な二部構成による本格ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
550
これは面白かった。散々煽るので、二部でどんな引っくり返しがあるのかと思っていたら、全然予想もしていなかった方向に物語が展開した。名探偵マンセーがやや過ぎる部分もあるものの、物語としての筋立てがよい。ミステリとしては、第一部でオリジナルの童話まで挿入し、しかもそれが結構雰囲気の良いものであったりもしたので、第二部でアッサリとその空気感を捨て去ってしまっているのがもったいない。前半の不気味な世界観も結末に上手く絡めてまとめて欲しかったという贅沢な欲求も捨てきれずに残る。2018/02/19
ehirano1
304
とあるブログで紹介されていたので気になって以来2年経過してやっと読むに至りました。その長きに渡る放置の呪いなのか(苦笑)、当方は完膚なきまでに打ち倒されました。壮大な伏線、事件と探偵自身への最大限の集中(=無駄な情景描写が皆無)、主人公の純文学(いや、ハードボイルドかな?)とも思えるほどの心理描写でページを捲る手は止まりませんでした。本書には、推理とミステリーだけではなく、(純)文学、ハードボイルド、そして哲学が盛り込まれており当方大満足の読書となりました。2016/12/17
青乃108号
276
史上最も不遇な名探偵。瀬川みゆき。彼女があまりにも不憫で仕方ない。誰か彼女を救ってやってくれ。切なくてやりきれない。2部構成のこの小説、正直何の為の2部構成だったのか、最後までモヤモヤした印象が拭えなかったのは事実。しかし第2部の犯人の動機が判明した時、俺はようやく著者の恐るべき企みを知った。これは構成が見事過ぎるだろう。文体に古くささを感じる部分もあるし、展開の遅さを感じてしまう部分もあるが、この見事な構成はそれらを補って余りある。傑作である。それにしても名探偵が不憫過ぎる。誰か彼女を救ってやってくれ。2024/02/05
さばかん
196
城平京の長編デビュー作ということだが、素晴らしいの一言である。 第一部では、真っ当なミステリーを描いた。多少グロテスクではあったが、ミスリードも巧みで、緊迫感や切迫感や恐怖感などを抱かされた。後半は名探偵がやって来てあっけなく解決されてしまったけど。 第二部では、名探偵を主眼に虚構の事件を描いた。真実を暴いては覆され……。それは正しいことなのか。どうすれば良かったのか。真実とは何なのか。それにどんな意味があるのか。 ある名探偵が抱える苦悩、宿命、孤独、業を見事に描き切った。 せめて……名探偵に薔薇を。2012/08/09
紫光日
186
絶園のテンペストやスパイラルの城平先生を知って購入(^o^) 複雑な心理と緊迫感があってなかなか面白かった。 城平先生らしい作品ですね。 M誌の某元編集長も小説を書いているが城平先生には逆立ちしても勝てない内容ですね。 城平先生の心理描写はプロ級だ。2012/09/14