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内容説明
異常な犯罪が起きるたびに話題になるのが精神鑑定。しかし、精神鑑定は期待されるように、出来事の真相を明らかにできるのだろうか。本書は、レーガン元米大統領暗殺未遂事件、多重人格者の連続殺人、哲学者の妻殺し等々、社会を揺るがせ、鑑定人を悩ませた有名な事件を取り上げる。貴重な資料や証言をもとに犯行と裁判の経過をふり返り、精神鑑定のむずかしさを浮き彫りにしながら、異常な事件を生んだ心の世界を探る試みである。
目次
序章 精神鑑定の舞台裏
第1章 レーガン大統領を襲った男
第2章 演技する犯罪者
第3章 ロシア皇太子襲撃事件の謎
第4章 大量殺人犯とガウプ教授の奇妙な関係
第5章 哲学者アルチュセールはなぜ妻を殺したか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遊々亭おさる
12
犯罪が起きるとその責任能力の有無を判定するために行われる精神鑑定、精神科医である著者が過去の重大事件の鑑定結果を紐解き、疑念を表すことにより精神鑑定の難しさを語る一冊。精神病はMRIを撮れば一発で病気が分かるという代物では無いだけに、絶えず誤判定のリスクが付きまとい、結果真実から遠ざかってしまう危険性も。真実として語られてきた事が著者の手によりがらりと反転する推理小説のような面白さもあるけど、その楽しみかたは著者の意向に反する様子。八世紀から精神病者の罪の減刑を明記する法律があったという事には新鮮な驚き。2015/10/28
中島直人
5
(図書館)刑事事件における精神鑑定の難しさ、限界についての考察。一通りの論点は押さえられているし、分かりやすく書かれている。2022/10/02
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
5
1997年著。著者は医学博士。重大犯罪や猟奇犯罪が起こると毎回のようにメディアには「精神鑑定」「刑事責任の有無」「心神喪失により無罪」「心神耗弱により減刑」といった言葉が飛び交う。本書は過去の精神鑑定の実施例が取り上げられ、その難しさや問題点(多重人格や詐病)が書かれる。具体的にはレーガン暗殺未遂犯、ロシア皇太子襲撃事件、津山事件、大津事件等。「心神喪失により無罪」は年間1件程度で極めて例外的であって、「危険な凶悪犯罪者を野放しにするとは何事だ!」という「保安処分思想」を叫ぶ前に読んで欲しい一冊だ。2008/12/09
おらひらお
4
1997年初版。まさしく精神鑑定の事件史・・・。2017/11/09
うさを
4
おもしろかった。過去の歴史的な事件でなされた精神鑑定を再検討しているのだが、精神鑑定の歴史や思考方法の一端に触れることができる。精神鑑定は、現在に残された資料から行われる“過去の復元”であり、歴史学や古生物学に似ていると思った。扱われた事件は、レーガン大統領暗殺未遂事件(1981)、多重人格とされた事例としてビアンキ事件(1977)とビリー・ミリガン事件(1977)、日本の精神鑑定黎明期に起きた大津事件(1891)、大量殺人事例として津山事件(1938)と教頭ワーグナーの事件(1913)など。2011/09/27