内容説明
漢学の家に育ち、幼時から深い素養を身につけ、該博細緻な知識の世界を生きて非凡な才を評価されながら夭折した中島敦。古代中国や南洋に材をとる作品のほか、苦悩の青春を綴る身辺小説など珠玉の傑作短篇集。伯父を描いた大学時代の創作「斗南先生」を始め、「過去帳」(「かめれおん日記」「狼疾記」)、「古譚」(「狐憑」「木乃伊」「山月記」「文字禍」)、「南島譚」、「環礁」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
18
「斗南先生」はよくわからなかったのだ、「過去帳」の二編は面白い。中島敦の女学校時代の教師の頃の創作で生徒が南島の土産にカメレオンを持ってくる。日本の寒さに耐えられない爬虫類の弱っていく姿を見て、自分に重ねていく。横浜の教師時代の面影で横浜の地形が描かれている。南島への憧れと終末論的な感情。ショーペンハウエルの本の上にいるカメレオンという短篇。そうした中島敦が憧れる獣性のようなものが、狼や虎のようなものに変態していくのだ。その内実はカメレオンだったのかもしれない。カメレオンの奇っ怪な姿が中島敦と重なる。2026/05/15
Monsieur M.
8
中島敦と太宰治が同年の生まれで、東京帝大でも同期生(ただし、中島は国文、太宰は仏文)だったとは、知らなかった。しかし二人の接点について書かれたものを読んだことはないし、おそらく面識もなかったのだろう。中島といえば「李陵」「山月記」「名人伝」など、中国の歴史や古典を題材にしたり昔の中国を舞台とした創作のイメージしかなかったので、本書に収録されているような、自身をモデルとして近代的自我について描かれたものや、古代ペルシャを舞台としたものなどがあるとはまったく知らなかった。(続く)2019/07/06
Roti
4
私小説といえるものと、作者の得意とする異国を舞台にした奇譚集。とりわけ「狐憑」と「南島譚」は好きな作品で10回近くは読んでいるだろう(青空文庫からダウンロードして)。今回は南洋の海を舞台にした作品をザンジバル島東部の環礁を眺めながら再読。何度読んでも素晴らしい。2013/10/21
あまん
3
「狼疾記」が大変、面白かった。「私」と筆者を、安易に同一視するのは良くないとは思うが、中島の場合は大丈夫だろう。高校教材として有名な「山月記」は、「古譚」の一つであるのだが、知っている人はあまり多くないだろう。どれも秀逸だ。2018/09/13
糸くず
3
「過去帳」に収められた私小説的な作品よりも、「古譚」「南島譚」のほうが圧倒的に面白い。硬質で歯切れのよい文章、日本的な陰湿さとは無縁の乾いたマジックリアリズムの物語。これはもう「世界文学」のレベルに到達していると思う。ラテンアメリカ文学の短篇と並べても何の違和感もなく受け入れられそうだ。「幸福」の夢が現実を完全にひっくり返す様が一番好き。2014/02/06




