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内容説明
《如己堂》――それは原子野の片隅にあって、「己の如く人を愛する」というキリスト教精神に満ちた小庵の名である。
本書はその主永井隆博士の14番目の著作で、様々な雑誌の求めに応じて書かれた4~5頁の随筆で構成され、一貫したテーマがあるわけではない。
庭に咲いたエゾギクや子どもの好物の干し柿の話から、天主堂の鐘の音、殉教者や26聖人まで内容は多岐にわたる。
ただし、それを博士が病床で「書いても死にます。書かんでも死にます」と言いながら、生命の灯が続く限りと書き綴ったことを想像すると、頼まれれば断らない「使徒的奉仕心」という言葉すら浮かび、幾多の珠玉編はさらに輝きを増す。
特に後半100頁を費やす「お返事集」の11編は、親しい知人や見知らぬ読者からの手紙に対する返事で、その人柄が溢れんばかりの好編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サン
18
戦時中に放射能の危険性を知りながら、X線検診を行なっていた永井先生。物資が足りないなかだったためか、白血病を患い、さらに長崎原爆で被曝し、動脈切断という状態に陥る。それでも救護活動をし、筆をとり働き続けた永井先生の随筆文。戦時のなか、原爆を落とされて当時の人々の生活が見れる。読んでよかった。2019/02/11
しゅん
9
原爆の最大の傷は、妻や友人を含む多くの人を失ったことではなく、人間への信頼そのものを失ったことにある。頑固で負けず嫌いで見栄っ張りな(進化論を全否定する)キリスト者であった永井隆の言葉の中で、このメッセージが一番響く。2020/08/16
Inuko
6
寝たきり療養中に著された随筆と、悩みを持つ様々な方からの手紙に対するお返事集。 原爆の火の中からかろうじて抜け出した時、自身の、また隣の人たちの魂の醜さをまざまざと見せつけられ、人間に対する信頼を失い魂を壊された傷。隆の深い苦悩を感じながら読んだ。しかし、求むべきは滅びないものという望みからくる喜び、苦悩と神への信頼から生まれた隣人愛もあった。本当に大切なのは目には見えないもの。カトリック信者として、潔く気取りなく語りかけている。キリストを信じて生きるとはどのようなものか知りたい人にお勧めしたいと思う。2021/02/13