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内容説明
原爆の放射線を浴びて不治の病となって床に伏す父親と、近い将来間違いなく孤児になるであろう2人の幼な子――。この3人が生きてゆく正しい道はどこにあるのか。
本書は父親が考えたこと、子供たちの小さい頃の言葉や行動でもう忘れたであろうこと、今は分からないだろうから後で読んでもらいたいことが書かれた、父親の「遺言」である。
その遺言を父親永井隆は、〈如己堂〉で書き上げた。教会の神父、信徒たちの厚志によって建てられた2畳1室の家には寝台が置かれ、2人の幼な子が畳1枚に並んで寝る姿を見ながら、絶えず感謝の祈りを捧げる父。
遊びから帰ってきた娘は、頬を父の頬につけて言う。「……お父さんのにおい」
死を予告された父が愛情を込めて残した遺訓は、時間と空間を越えて、人々の心を揺さぶる愛と真実の教えに結晶する。
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、予めご了承ください。試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
目次
この子を残して
摂理
遺産
父母
孤児
微笑
真実
第一のおきて
空の鳥
神の力と人の力〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
164
長崎医科大学に放射線医学者として勤務する永井博士。宿痾として白血病に侵された永井博士は、子供の誠一とカヤノの養育を妻に託す。そんな中、長崎に原爆が炸裂。子供達は無事であったが、妻は被爆し死去。自身も被爆し遂に原爆症の症状が現れる。この子らを残して世を去らねばならない。永井博士の苦悩、病伏する父に甘えられない子供達の寂しさ、そして父を想う子供達の健気さ等、様々な想いがある。人類は何と残酷な兵器を造り、使用したのだろう。この原爆投下が人類の歴史の最後の核兵器使用となるよう、我々は行動しなければならないと思う。2017/08/03
ちゃちゃ
104
二人の幼な子を残して逝かねばならない無念さ。敬虔なクリスチャンとして深い信仰心に支えられながらも、自らの死後、孤児として苦難の道を歩いてゆく子どもたちへの悲痛な思いが行間から溢れ出る。長崎医大の放射線科医師として勤務する中で被爆し妻をも失った著者。原爆症発症により迫り来る死を前に書き残した内容は、宗教・科学・人生の目的…と多岐にわたる。しかし、その根幹にあるのは、信仰に基づいた深い愛だ。一分一秒でも死期を遅らせ子どもたちの側に居てやりたいと願う親心。それを奪う非情さが原爆の本質なのだ。長崎の原爆忌に。2018/08/09
chimako
68
宗教を持たない自分には理解しがたい境地で書かれる「神」への思い。それでも神は永井博士の命を救いはしない。残された誠一、茅乃兄妹の行く末が案じられてならない。宗教は人の芯をなし、生きる指針となり、心安らかに死へ誘うものなのか。作者自身の特権階級感情を自分自身で断し、恥ずかしいと感じながらも子どもたちの不憫をおもう。親として当たり前の感情さえ神の前では赦されないのか。二度目の読書は信仰の強さについて行けず、重たく、辛かった。2024/04/23
夜間飛行
63
父と子の絆に貫かれた永井博士の信仰はあまりにも眩しい。孤児に対する育ての親の否定など、正直言ってついて行けない所もあった。だが一人の父として、社会人として、白血病に冒されながら働く姿は壮絶だ。特に子への思いが胸底から溢れてくる箇所を読むのは本当に辛かった。裂けそうな脾臓を抱え、遊び盛りの子供たちと触れ合えない悲しみはいかばかりか。カヤノちゃんがお父さんのために、たった二口のパインジュースを学校から持ち帰る姿はあまりにもいじらしい。私がもし二人の子供と過ごす時間を奪われたら…など、悲しくて想像すらできない。2014/06/29
名古屋ケムンパス
43
長崎医科大学の放射線医学者として従事する最中、被爆して原爆病を患い、迫りくる死期を覚悟しながら病に倒れるまで医療にその身を捧げた永井教授の遺言書です。原爆で母を失った二人の幼子に託すキリスト者としての想いが率直に語られます。 寝たきりの父の元に、学校給食で出されたおわんのパイン・ジュースを両手で抱えてやっとの思いで帰宅した小学1年の娘カヤノの逸話に愛しさが募ります。2017/05/13
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