内容説明
《海は暗く深い女たちの血にみちている。私は身体の一部として海を感じている。……》 年上の男子生徒とのセックスの体験を鋭利な感覚で捉えて、身体の芯が震える程の鮮烈な感銘を与えた秀作。作家の出発を告げた群像新人賞受賞「海を感じる時」と、大学生となった、その後の性意識と体験を描き深めた野間文芸新人賞「水平線上にて」。力作2篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
69
愛情より先に行為への興味が来る世代の特徴をよくあらわしている。行為は描かれるものの、官能とは遠いところにある。溺れる自分さえも外側から観察しているさまがおそろしいようである。作品のトーンとしては透明感がありつつも骨太を感じる。このような作品を十代で書いてしまえるところが、まぎれもない才能である。2018/10/02
紅
11
表題作既読。二編とも、男を知った少女が性に目覚めるお話……だが、そんな言葉で纏めてしまいたくないぐらい透明で純粋な欲望が描かれる。(作者が当時)10代の女の子だったからこその感性で綴られていて、なんとも美しい。2015/02/11
じゅん
10
テーマは母娘の愛憎。それと少女が男を知り女になるまで。私が男なので思ってしまうことなのだが、中沢みたいな女は絶対にないと思う。母親とまともに関係を作れないような女が他人と関係を築けるわけがない。高野に一体何を期待しているんだ?間違って子どもでも作ってしまった日には目も当てられない事態に陥るに決まってる。それとも二十歳前くらいの女の子は大かれ小かれ似たような経験をするものなのだろうか?あの何一つ解決していない閉鎖的なラストは時代を感じる。女性の社会進出がうたわれている現代ならもっと違う結末になりそうだ。2016/09/02
*mayu*
7
映画化をキッカケに知った作品。これを18歳で書いたとは…。海を感じる時は愛されていないのに身体を許してしまう女子高校生の多感な心情と性が描かれている作品。思ったよりも読みやすかったです。水平線上にては高校時代から好きだった男の子を追いかけ東京へ上京する夜間大学生の女の子の物語で、続編を匂わす感じでした。追われれば逃げたくなるという人間の心理が克明に表現されているのではないのかと。少し長いのが玉に瑕でしたが…。2015/01/11
ジュール
6
映画を見て読んだ図書館本。「海を感じる時」は場面場面が映画を想いおこさせた。 感性が瑞々しい。 「水平線上にて」は長過ぎ。 途中から端折って読む。2015/01/21