内容説明
美しい兄妹――ペルシーレスとシヒスムンダの巡礼の旅は、数々の困難の果てについに聖都に至る。そして二人の来歴の謎も次第に解き明かされ……。「スペイン文学の最高傑作、もしくは最低の書!」と、作者自ら壮語して憚らなかった、セルバンテス畢生の大幻想小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
33
下巻ではイスパニアから陸路ローマを目指します。その途中にも夫の仇討ちを狙う未亡人や親に秘密の恋人を持った少女の物語などが絡んで、物語の勢いは衰えません。作者自身が「娯楽作」と言うとおり、登場人物は美男美女揃いと華やかで、最後は善良な者は幸福に、報いを受ける者は報いを受ける大団円という中世小説や説話を思わせる、どこか覚えのある世界観のなかで安心して恋と冒険を楽しめました。それにしても『ドン・キホーテ』の作者の遺作が「騎士道小説の当世版をねらった」本作というのは皮肉なのか、一筋縄ではいかないということなのか。2017/01/26
あかつや
4
上巻の海洋ロマンから一転、下巻では陸路で目的地ローマを目指す。正直な話、この小説のことはセルバンテスのマイナー作品として中身もよく知らぬままに軽んじていたところがあったのだが、『ドン・キホーテ』並とはいかないまでも十分に楽しい物語だった。塔から女が降ってきたエピソードには度肝抜かれたなあ。あんまり急だったのもあるが、その後に主人公ら一行を襲った悲劇が、エッそんなことするのって感じで、ここから自分の中の印象ががらりと変わったような気がする。ローマで終わるのは名残惜しいからそのまま諸国漫遊してほしかったわ。2019/03/13
吉兆
0
超絶退屈な話のくせに異様に読みやすくもあって、さすがである。さすがであるが、時代背景を知らずに楽しむのはキツい作品だなあ。2015/06/16
たつみ
0
下巻に入るとさすがにルッキズムのキツさに辟易してきた。とにかく作中世界では人格と容姿と地位の高さと人間としての価値が全て正比例するようである。ある意味戯画的なくらいなんだけど、果たしてセルバンテスはこの辺り自覚的に描いたのか、それとも当時の価値観的に天然なのか。そして容姿に優れ人格的にも気高いとされている作中人物の言動が、今日的にはかなり微妙だったりするんだが、これはもう当時の価値観なんだろう。ただ、ところどころこれは皮肉かね?と思わないでもない箇所もある2023/07/15