内容説明
野の花に似て儚げな美少女は、父親のような後深草院の寵姫となりながら弟宮や実兼の恋人になった。やがて出家し放浪した二条の、己の性の遍歴を赤裸々に吐露した禁断の書「とはずがたり」を、実兼を語りべに、一遍との出会いを出家の動機に再構築、新しい二条像に迫る。二条の真実と精神の再生を解く会心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
18
『とはずがたり』は鎌倉時代、後深草院に仕え、その兄弟を含む男性たちと関係を持った二条が自らの半生を赤裸々に語ったものである。本書はそれをベースに彼女の恋人の一人であった西園寺実兼を主人公としている。実兼は幕府と朝廷をつなぐ要職にあり、彼を主人公にすることで蒙古襲来や皇統の分裂といった、原典では語られないこの時代全体を見渡すことができる。そのことは二条の物語としての原典の魅力を損なうものではない。いずれも男女の「わかりあえなさ」があり、実兼から見た二条の「わからなさ」は原典と鏡合わせであると思う。2021/09/25
詠月
4
原典に「雪の曙」の名で登場する西園寺実兼の視点で話が進み、それ故に原典よりも当時の社会情勢が分かりやすい。南北朝分裂直前の権謀術数に翻弄された二条の局の私小説は少し衝撃的な内容だけど、しょうがないなとも思ったり。摂関政治も子女を献上することで成り立つものですし…哀しい女人の一生。二条は[とはずがたり]を書き残すことで、自己認識と自己受容が出来たのかもしれません。2013/05/08
Noelle
3
さすが杉本苑子さん。骨太の「とはずがたり」であった。奥山景布子さんの「恋衣ーとはずがたり」の西園寺実兼との間の娘からの視点での物語とはうってかわり、「雪の曙」と称された当の実兼からの語り口。原点にはない歴史の表舞台も丁寧に主筋に絡め、波乱万丈の二条の人生を 色々な思いを飲み込みながらも見守り続けた実兼が 見届けたあとの二条への理解。とてもグッとくるものがあり、また二条という人生を生きざるを得なかった女人の哀しさと勁さもまた胸に響きました。2014/06/02
カミツレ
2
鎌倉初期の女流随筆を、軽い歴史モノに編み直した本。本来の「とはずがたり」は、女主人公の自分語りだから、モテモテ自慢なのかなとイラつくのだが、こちらは西園寺実兼の目線で編み直したものだから、そんな女の自分語りも「視野が狭い」と一刀両断していて笑ってしまう。女主人公があーだこーだ言い寄られて身もだえている間に、元寇や、南北朝への分断が起こっていたのだ。勉強になっておもしろかった。
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