内容説明
【第97回(1987年)直木賞受賞作】
ときは戦国。海と船への憧れを抱いて対馬で育った少年笛太郎は、航海中、瀬戸内海を根城とする村上水軍の海賊衆に捕まり、その手下となって、やがて“海の狼”へと成長していく。日本の海賊の生態をいきいきと描いた、夢とロマンが香る海洋冒険時代小説の最高傑作。「海を舞台にした小説は外国には多い。海洋冒険小説という一つのジャンルが確立しているほどである。四面環海の日本にそれがないというのは、ふしぎな現象だ。(略)日本の海洋小説の一里塚を築けたとすれば、私としては本当にうれしい」(「著者のことば」より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
248
時は戦国、信長が勢力を拡大し、天下布武を成し遂げんとする頃。瀬戸内海から九州対馬の海域では商用、荷積みの船が多く行き来し、朝鮮や明との交易も盛んな中で暗躍する海賊の話!そう、舞台は『村上海賊の娘』と同じ。それがかなりのエンタメ作品であった一方、本書は少し渋めかな。主人公らの『自由さ』と、海賊ごとに違う『モラルと規律』が物語に躍動感とメリハリを生む。舟の違いや操船表現もリアルで楽しめ、先の展開も匂わせ面白い。文庫約500頁もさることながら一頁20行という、私的前代未聞の文字密集率で読み応えありました‼️🙇2019/04/26
kaizen@名古屋de朝活読書会
143
直木賞】笛太郎。対馬を舞台にした海賊物語。ちょうど真ん中の章が「村上海賊衆」日本と朝鮮半島との間の歴史を知るきっかけになるとよい。村上元吉の歌「木々に見し花は太山のわか葉かな、ほととぎす鳴く峯のよこ雲」あり。解説:尾崎秀樹。「海王伝」もお勧めとのこと。参考文献一覧があると嬉しかった。 2014/05/07
遥かなる想い
100
私は息子の白石一文の本を先に読んだため、 その父が歴史小説の書き手で、直木賞作家とは 知らなかった。描写力はある。海洋冒険小説が好きな人はたまらなく面白い本だろうが。2010/04/30
NAO
81
長らく朝鮮の王朝に仕えたのち対馬に戻ってきて海賊業を始めた宣略将軍に仕えていた笛太郎は、村上水軍との戦に負けて捕らえられ、村上水軍の一員として働くことになる。海戦シーンは、誇張され過ぎることもなく、リアルで面白い。そして、海賊でありながら海賊らしからぬ能島村上水軍の当主小金吾が、何ともいえず魅力的な人物として描かれている。2019/10/05
goro@一箱古本市5/5
70
声を大にして「読まずに死ねるか!」世の中には読まなきゃ損する本がある。白石一郎「海狼伝」もその一つ。あぁ~読むのが遅すぎたわ。これは面白い。父の顔を知らぬ笛太郎は海賊に加えられ遍歴を重ねる。助けた雷三郎とともに今度は村上海賊衆に捕らえられ小金吾に救われる。世は信長が台頭してきた時代、海戦も変わる時代に男たちの物語は進んで行く。泣いたり笑ったりと楽しい読書だった。王道の娯楽小説!笛太郎よ何処へ行く?俺も乗せてくれ~。すぐに「海王伝」読まねばなるまい!2019/06/04