内容説明
頼朝を描くことは、平氏一門を描くことでもある。また弟義経の数奇な運命にも触れなければならない。――捕らわれて死すべき命を池禅尼の恩情に救われ、長じては政子との恋に花を咲かす頼朝。監視役・北条一族を味方に引き入れた辣腕。禅尼の訓誡に背いた石橋山の挙兵。やがて旗下に馳せ参ずる義経一党。運命の皮肉、流転相剋の数々。武将の明暗のうちに、人生を凝視した力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
42
奥深くて人間の感情の機微を見事に表現した作品でした。さすが、歴史小説の大家である吉川英治氏だと思います。作品名は「源頼朝」となっていますが、頼朝目線の話というより、平家物語の後半部分という感じで、弟の源義経もよく出ていました。正直、疑り深いというか、弟の義経の行動をいちいち悪く解釈する頼朝は、どうも個人的にはあまり好きにはなれませんでした。読んでて、自分自身も人の行動を悪くとらえる点がありはしないかと考えさせられました。人の世というのは移ろいやすく、儚いという事が伝わってくる作品でした。2015/02/11
Kiyoshi Utsugi
29
吉川英治の「源頼朝(ニ)」を読了しました。 最初に挙兵して負け戦となった石橋山の戦いから、壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼすところまでを描いています。 源頼朝を描いたものとしては、少し中途半端なところで終わっていて、今ひとつという感じがします。 また源頼朝とうたっておきながら、どちらかというと源義経(特に後半)のことを描きすぎてないか?という感じがします。 ただ、最近訪れた土肥実平ゆかりの地や三浦義明ゆかりの地の繋がりが分かったことは収穫でした。2021/05/05
James Hayashi
27
昭和15年に書かれた新聞小説であり読みやすいが、あまり頼朝の人間性が伝わってこなかった。書かれた時代もあるだろうが、なんといっても著者本人が頼朝を好んでいなかったとの記述が解説にある。一の谷の記述はごく僅かだし、(本人はもち鎌倉で現場にいなかったが)義経への感情やら政子との様子など殆どない。終わり方も中途半端で物足りなさを感じた作品。2017/07/09
できるだけ
10
源頼朝というより源義経が主体。もう一人の弟範頼はダメで義経が活躍して頼朝が警戒するという話。2021/05/17
綱成
6
二つの英雄のタイプと豆の歌。本編、解説にもある通り、同じ根で育った実が互いに争う哀しい人の為す物語です。頼朝と義経の再会以降、義経主軸に話が進み、頼朝との関係の悪化へ。あまりに違いすぎるタイプの二人の英雄はどちらも魅力的。そして、命を懸けてことを成そうとする鎌倉武士に感銘を受けました。2015/04/12