内容説明
己が意志力と能力のあらん限りを燃焼し尽くしてダム建設反対の鬼と化し、ただ一人で国家と拮抗し、ついに屈することのなかった蜂の巣城城主・室原知幸。「法には法、暴には暴」のスローガンの下、奇抜な山砦戦術、芝居っ気たっぷりな作戦。そして六法全書を武器として果敢に闘った室原の凄絶な半生を、豊富な資料と丹念な聞き書きをもとに、躍動する文体で描ききった感動の記録文学大作。
目次
蜂起の章
築城の章
勝鬨の章
争訟の章
落城の章
王国の章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sashi_mono
10
九州の100冊シリーズ④ 本書はダム関連の著作ということもあり、そのエッセンスを自らの体験になぞらえて抽出しようと思ったが、そうした書き方を億劫にさせるほど、氏の強烈な個性と攻城戦の推移があまりに痛快で、読みだしたらやめられない面白さがある。各章の頭に付された妻・ヨシさんの問わず語りが、往時の村と夫の様子とを伝えて、武骨な内容に終始する作品に情緒的な潤いをあたえている。再読になるが、ここ数年読んだなかでも指折りのノンフィクション作品だ。いや、マジ面白いっすよ。2018/05/24
Ikuto Nagura
6
「人間、礼儀が一番大事なんだよ。建設省の役人はそれを知らんから腹が立つんだ。昔の武士は己を辱しめられれば相手を即座に斬って捨てた。斬ること叶わねば自らが恥じて自刃した。男の尊厳とはそれ程に重いものだ。それを建設省の小役人共は忘れちょるわい。おれがそれを徹底的に思い知らせてやる」生活のための闘争や、イデオロギー闘争ではない。礼節を欠く国家権力に対する室原知幸の意地の闘争。国家を嘲笑う策略の痛快さと、運動の崩壊と孤独な王国の哀しさ。終章の“天鶴隧道”や“新池ノ山橋”を自慢する姿に涙が出た。歴史に刻むべき名著。2014/10/26
wei xian tiang
5
上野英信と並び九州の風土の生んだ記録文学の巨人と思っている。室原知幸という存在の特異さ、魅力もあるが文庫にしては厚い500頁弱を、一気に読ませるのは巨人ゆえの確かな筆力。蜂の巣城のことは、今も時に新聞の懐古面で取り上げられたりもするが、新聞ではかなりアク抜きされて室原の強烈すぎる個性が「反権力の闘士」的な普通名詞に還元されがちなところ、本書を読んで遺憾なく室原の特異さに戸惑うことができた。2016/09/26
CrubClub
3
現在の日本では脱臭されてしまったかに思われる、蜂ノ巣城城主・室原知幸という強烈な「個」に関するルポ。 松下氏の目線は冷徹なまでに綺麗事を許さず、室原の様々な側面を炙り出す。国家ぐるみの利権構造を明らかにする英雄、一介の田舎のボンボン、妻を小さな村に縛り続けた夫、筑後川下流幾百万の人命を危険に晒し続けた国賊。 そしてそんなことがどうでもよくなるぐらいに、この物語は徹底してエンタメだった。「合戦」シーンは素直に滾るものがあるし、登場人物の人生を削り合う応酬、そして展開し続けるドラマは超ド級のスピード感。2018/12/22
すがし
2
ただ意地だけで国家に立ち向かった一人の老人の壮絶な戦いの記録。……書きたいことは山ほどあるはずなのに、言葉にならない。言葉を超えた情念の世界にただただ圧倒されるばかり。2011/07/17
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