内容説明
2人を追うのは高利貸クウィルプだけではなかった。海外で金持ちとなって帰国したトレント老人の弟が、さすらう2人を救出しようと行方を探していたのだ。しかし居所を突き止めたときにはすでに遅く、苦難の旅路の果て、ネルは眠るように死んでしまっていたのだ。骨董に囲まれて眠るネルの姿を描いて始まる物語は古めかしい教会の一室で死の床に眠るネルの姿で終わり、あたかも円環を描くかのごとく小説は閉じられる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
53
ロンドンを出たネルと老人は、様々な人々に会い、ロンドン近郊の貧しさを目の当たりにしながらあてどない旅を続ける。二人の旅が『天路歴程』を下敷きとしていることは物語の中でネルの口からも語られており、ネルは貧しく苦しい旅を魂の遍歴の旅に擬して心の平安を得ようとしていたが、清らかで尊い心のネルとは程遠い俗世界の塵にまみれた老人は金の束縛から逃れられず、自分の手で可愛い孫娘の首を絞めていることにも全く気づいていない。彼自身が資本主義の犠牲者とはいえ、この老人のような人間が、一番始末に悪いのだろうなと思う。2016/02/24
彩菜
32
キット達がネルに追い付き物語は終わりを迎えます。例の如くの誤解、行き違い、盛大な寄り道…長い! しかしお陰でキット達の活気溢れる喜劇と墓場への巡礼にも似たネルの悲劇の明暗は大きくなり、まるで生の真理の両面にも見えてきます。私達は時に何かに導かれ時に何かを追っていますが、それは美しいような死のようなネルのようなものなのかもしれません。また物語を包むディケンズの鋭い風刺とユーモア、そして全ての人が家族のように助け合えたらという高い理想は喜劇と、悲劇までもを温かくし、この本を滋味深いものにしています。満足。2024/08/05
田中
27
各地を遍歴し道中で遭遇した様々な出来事や人物たちを綴るディケンズの得意な小説構成である。少女ネルと老人の苦難にみちた放浪の旅で出会う善良な人々との交流がよかった。溶解炉の貧しい労働者がネルに寝床をあたえ、なけなしのお金を手わたす時は、胸がふるえた。クィルプの執念深さが憎々しい。その手先で悪徳弁護士ブラース氏の追従ぶりが滑稽だ。奇妙な紳士のスウィヴェラー氏を看護する小女召使いは、キットのえん罪をはらす。善人と悪人が明瞭で、まるで実在のような色彩豊かな登場人物たちに瞠目するのがディケンズを読む愉楽だろう。 2022/09/29
ゆーかり
19
ディケンズ4作目の長編小説。短編の予定だったものを長編にしたため即興的に書き綴っていったにも関わらず、当時英米で熱狂的な人気を博した。日本でもかつてこの小説を原作とした「さすらいの少女ネル」というアニメが放映されていたらしい。遍歴の中で出会う人々が印象的。ネルは可哀想なのだけど、それよりも保護者と被保護者の倒錯した関係、それも父娘でなく祖父、不幸の元凶に思えるこの老人に憤りを感じてしまう。登場人物の中ではスウィヴェラー君が良い。チェスタトン評する通り、彼と「侯爵夫人」のシーンが魅力的。2016/03/13
たけし
9
もともと長編小説を志したものではないこの作品。上巻の解説にネタバレがあるのには閉口するし、訳も読みづらいこと。それらを差し引いても、グングン読ませる力は流石。登場人物がとにかく魅力的で、しかも大勢いる。主人公の少女ネルの行く末は、とにかく心配させるもので、そこに行き着くのか、と感嘆させられる。アイコニックなのが悪魔的に描かれる小人クィルプ。化けて出てきそうな姿は圧巻!また貧しい少年キットを中心とする、それを取り巻く様々な人物も素晴らしい。ドストエフスキーが影響を受けるのも頷ける、深い魅力に溢れる本だった。2026/09/01




