内容説明
長州閥に陸軍を追われた父の無念を胸に、軍内抗争をかいくぐった陸軍軍人・東條英機は首相の座に就いた。そして日米開戦を数日後にひかえた昭和十六年十二月の某夜、彼は官邸別館でひとり号泣していた。その涙は何であったのか? 東條英機への嫌悪感を心に抱きながらも、自らの生理感覚を解明することが、戦後民主主義の脆弱さの克服への道だという視点から、新発見資料と関係者への徹底取材をもとに、昭和史最大の「悪役」として葬り去られた男の六十四年の軌跡を克明に検証する。
感想・レビュー
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こまったまこ
9
東條英機の生い立ちから開戦前夜までを昭和の歴史と共に追っていく。父親が軍人として彼を純粋培養するがそれが彼の行動規範に影響しているような気がした。2.26事件や満州事変、支那事変などは教科書程度の知識しかなかったが少し詳しく知ることができて良かったし、興味を引く人物が何人かいた。前半は陸軍内での抗争に重点が置かれ、東京裁判の被告人がぞろぞろ出てきて興味深い。最後に東條英機と天皇の関係が浮かび上がるが、天皇に対してはかなり純粋で一途な臣下であり、その為にぎりぎりまで戦争回避を模索していたことに驚いた。2015/09/27
Ramgiga
2
なぜあの無謀な戦争は起こったのか?その問いに答えてくれた本となった。東條が226事件後の皇軍派弾圧で台頭し、陛下への忠誠という無責任主義で日中戦争を進め荒らしまくった揚げ句、責任を取るかたちで総理に任命されたものの、国民あっての日本を省みることはなく、破滅へたどり着いた。それが答え。ただ、東條か崇拝した、永田鉄山が生きていたら、どうなっていたであろう?世界四極説をとなえる、石原らとともにまともな世界があったのか?など、想像は膨らんだ!2020/08/22
樋口佳之
1
虎穴に入って虎児を得ずだわ/上巻は、むしろ大虎の尾を踏み出す所まで2015/09/04