内容説明
向う三軒両隣ならぬ“向う二軒片隣”の四軒の家を舞台とし、現代の近郊の都市居住者の日常を鋭く鮮かに描き出す。著者の最高傑作と評され、谷崎潤一郎賞も受賞した“現代文学”の秀作。
目次
オモチャの部屋
通行人
道の向うの扉
夜の客
二階家の隣人
窓の中
買物する女達
水泥棒
手紙の来た家
芝の庭
壁下の夕暮れ
訪問者
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
73
黒井千次は、小説だけでなくエッセイも好きな作家である。ベストセラーを書いて話題になるような作家ではないが、どの作品も〈いぶし銀〉のような味わいがあります。さて、今作は平凡な4軒の家庭の日常が、やさしさの中に鋭い筆致で描かれています。どの家庭も深い交流はないのだが、ひとたびコトが起きた際には、黙視できない状況におかれるようです。とにかく、黒井さんの小説は読み心地がいいので、私も登場人物の一員になって、物語に溶け込んでしまいました。谷崎潤一郎賞の受賞も納得の一冊です。2023/05/20
KEI
31
読みながら(著者には僭越だか)巧いなぁと思ってしまった連作短編。私も田の字に各々の家の名を入れながら読んでみた、織田、滝川、木内、安永と。冒頭の[オモチャの部屋】では穏やかな父と子らの姿だと感じていたが、織田家の床下の井戸の水が染み出す様な不穏さを感じ始めた。それが読み進めると不穏さ、足が地に着かない不安定さをそれぞれの家に感じ増していく様だ。そして、その後どうなるかは分からないままで終わる。特に大きな事件が起きる訳でも無く、これが平凡な日常にも潜んでいる闇の様に思えた。お勧め本です。2023/07/23
真琴
9
★★★★★ 1980年代の東京郊外「向こう二軒片隣」で暮らす家族(住人)を描いた連続短編集。深い関係はないもののどうしても隣人の様子が気になりそして嫌でも目に入ってくる関係。夫婦関係が冷え切っていて外に別の人を作ったりと住人の不安や鬱屈、鬱憤が凄い。大きな悲劇が起こったり家庭、夫婦間が崩壊したりはしないけれど、綱渡りのような関係に緊張感を感じます。現在では失われているご近所同士の繋がりも、その時代を経験してきている身からすれば懐かしい気持ちにもなりました。これが当たり前のどこにでもある街の情景だったんだな2023/05/18
Ch
4
全編薄気味悪くて不穏でとてもいい。間をおかず再読したら、いろいろ「ここでもう出てきてたのか!」ということがあって再発見。すべての夫婦が壊れていて、そのピリピリした空気の塊が奇をてらわない簡潔な文体で描かれていて釣り込まれる。黒井千次を初めて読むのに「さすが」と思った。2017/04/11
マサキ
4
完璧!80年代の郊外の家族像がリアル。随所に過去の残滓のイメージが出てくるが、それは回顧ではなく、現代を切り取っているだけ。どこにも行けない。そして、例えばラストの滝川家のように、緩やかな記憶をまわりに残しながらフェードアウトする。ここで個々のエピソードを拾ったらきりがない。個と家族、地縁がいくつも重なってまさに彼らは群棲していたのです。もう一度、完璧。2015/05/13
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