内容説明
平安時代、権力をほしいままにした藤原一族の中宮定子は、関白・藤原道隆(道長の兄)の娘で、一条帝の皇后となった。幸せそうに見えた定子の運命は、父の死を境に、道長の老獪な陰謀にかかり、あえなく散った……。政略結婚の悲劇をまざまざと描いた、直木賞作家による長編ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃいろ子
41
道長側から見ていた世界を定子側から。 美しく聡明で一条天皇から愛された人。 けして幸せなだけのお姫様ではなかったのは わかっていたが、この作品ではまさしく悲劇の人として描かれている。物語を見つめているのは道長の数多い愛人の中の1人として、娘の将来のために定子の側で心ならずもスパイのような事をしなければならなかった女性左京。この左京の心の揺れも切なく悲しいのだ。 2022/10/10
kaoriction@本読み&感想 復活の途上
19
『枕草子』の裏側と側面を描いた物語。一条帝の后となった関白・藤原道隆の娘、定子。父の死を境に、道長の老獪な陰謀にかかり、彼女の幸せは緩やかに散りゆく。そんな定子の側付きの女房となりスパイ活動をする、道長の愛人・左京。『枕草子』には描かれない、権力闘争に躍起な中の関白一家と、そんな男たちに翻弄される女たちの人生。定子の、報われない一途な想いがせつない。一条帝の優柔不断さには腹が立ち、重家の涙が胸を突く。けれど、そうやって脈々と時代は紡がれる。女は、定子の言うように、淡雪の如く消えゆくだけ。まさに悲愁な物語。2014/01/27
しゅてふぁん
15
藤原道長の愛人、左京が道長の命を受けスパイとして定子に仕え、左京目線で語られる中宮定子の物語。清少納言目線(枕草子)の中宮定子は華やかで幸せそうに見えた時期があったけど、この物語の定子からは華やかさも幸せも感じ取ることができなかった。定子は本当に不運の人だな。清少納言が後世に伝えた定子像を思うと、定子に対する深い愛情・思慕の念を強く感じる。清少納言の才能に感服です。2016/02/01
なにょう
12
中宮定子の栄華と没落。一人の女房の視点から。★定子の父の道隆が強引な人で、定子の中宮擁立にあたり、ほんとうは位が空いてないのを、無理矢理に中宮に立てたとか、定子以外は入内させないようにしたとか。だから父存命中は何不自由なく暮らすも、父が逝去したから、これは困った。兄はかえって失脚し、定子は世を儚んで出家する。が、一条帝との縁はきれず、3人の子をなす。世間はこれを、出家したのに宮中に出入りするとは何ごとかと、評したという。だからかわいそうはかわいそうだけど、降って湧いた不幸というのではなくて遠因はあるのだ。2023/07/23
トラヴィス
8
先日「はなとゆめ」を読んでいたので、背景等が幅広く理解でき、引き込まれる内容でした。摂関政治体制のなかで、有力公卿達の政略結婚による悲劇。まだ十代の若者が一族を背負わなければならない重圧に悩み苦しむ姿に胸が苦しくなったりました。心に残る一冊です。2016/09/11