内容説明
宇宙ステーション建設に携わる宇宙のあらくれ男たちが直面した問題をユーモラスに綴る表題作はじめ、月開発をめぐって繰り広げられる悲喜劇を軸に一人の男の真摯な生き方を描く「月を売った男」など、透徹した洞察力と確固たる史観で築きあげられた〈未来史〉シリーズの根幹をなす中短編五編を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
18
86年の540円の初版を読了。本書は著者の”未来史“を時系列に編んでナイトの前口上を付けて本国67年に刊行したパトナム版が底本で、全21編の内の19編を3分冊した初巻で5編を収録。前口上で触れた未来史年表は3巻目のみに付けた。初っ端からハインライン節全開で、キャンベル好みの真っ当な筆致は読んでいて楽チン。有名な中編「月を売った男」は前掲の「爆発のとき」の3年後の話であり、紙幅の都合で分冊の2巻目となった「地球の緑の丘」収録の「鎮魂曲」との連作となる。物事を先送りできないシニア読者の胸を打つ話。★★★★★☆2018/08/23
roughfractus02
9
1967年「未来史」として戦前からの中短編をまとめた本書はその第1巻である(初期短編集『月を売った男』と3編重複収録)。システム形成に付随する事故や偶然の副産物等を予想する能力に長けていたという作者は、本巻で、核増殖炉の管理者達の精神面も管理するシステムの過剰さに不透明な未知を描き(「爆発のとき」1940)、宇宙ステーションの工事の男の現場に来た女性が起こす騒動の明るさに自由な未来を描く(「デリラと宇宙野郎たち」1947)。後者の物語が多い本書だが、自由の拡張と過剰なリスク管理は表裏を為すことを示唆する。2023/12/11
鐵太郎
8
矢野轍さんの翻訳は、それなりに評価が高いようです。用語の使い方や句読点の使い方はいいですね。でもね、どうも好きになれないんですよ、この人の訳語。「かれ」と、断固として「彼」という漢字を使いたがらないのは些細なことかも知れません、気になりますが。また、一人称もどうもね。社会の第一線に立つ企業戦士が、「ぼく」と「わし」しか使わないのは読んでいて不快。まぁ、それだけ。2008/07/26
まうやお
6
『月を売った男』あれやこれやとほとんど詐欺まがいの手段で資金を集め、本当に月への有人着陸を実現してしまう爺さん。一番好きです。ハイラインはよく作品で金融を利用していますが、アメリカでもこの頃は銀行は倒産しないのが常識だったんでしょうか。2015/06/10
あかつや
5
未来史シリーズ。6編収録。科学の発展にはお金の問題が立ちはだかるなあていう話が多かった。他にも既得権益者との軋轢とか政治的なアレコレとかもあって、夢のような未来を実現するにはなかなかシビアな現実が待っている。一番好きな話は「月を売った男」かな。月に行きたいという欲求を叶えるために、それはもうあらゆる手段を使ってお金を集めてロケットを開発する男の話。新たな一歩を踏み出すにはこれくらい並外れた人物が必要なんだろう。「道路を止めるな」は動く歩道の話。そういえば昔の未来都市予想図ではだいたい道路が動いてたもんだ。2022/06/30