内容説明
江戸の暗黒街。昼間は実直な職人や清貧の剣客が、夜闇の中では金ずくで人を殺める殺し屋に変貌する。法の裁きの及ばぬ悪を闇から闇へ葬る裏稼業の男たちの非情さと日常に立ち戻った瞬間ふと見せる人間味を、練達の筆致で描く著者十八番の暗黒小説集。人気シリーズ“仕掛人・梅安”の原型をなす傑作9編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
icchiy
11
1985年に発表された池波正太郎先生の短編集。江戸の暗黒街で暗躍する殺し屋たちの物語。ぞっとするし、こういうことは江戸時代にも本当にあったんだろうなと思わずにいられない。今よりもっと警察力なんて行き届いてないところに、暗殺やらなにやら悪事は蔓延っていたに違いない。権力と金とオンナ、いつの時代もきっとこの三つに翻弄され生き方を誤ってしまう男たちがいたということ。ハードボイルドな江戸時代の一瞬を切り取っている。2020/04/24
タツ フカガワ
11
江戸の暗黒街を舞台にした短編9話を収録。そのほとんどに音羽の半右衛門や羽沢の嘉兵衛、房楊枝職人の彦次郎らが出てくるので、藤枝梅安のいない仕掛人シリーズのよう。解説によれば同シリーズ開始前に書かれた作品らしい。相変わらず物語世界への吸引力は圧倒的で、表題作や「おっ母、すまねえ」「梅雨の湯豆腐」がよかった。2019/05/11
マーブル
9
『鬼平』『剣客』シリーズを読み終わり、『梅安』のシリーズを読む前に、その起源となる本作を、と思ったのだが、どうやらある程度読んでから「あのシリーズの原点はここにあったのか!」的楽しみ方の方がより、良かったようだ。例えば、「音羽の半右衛門」と言う殺しを仲介する男が度々登場するが、きっとシリーズのファンなら、「!」と頷けるに違いない。知らぬ私にとっては、何人か出てくる「元締」達の一人に過ぎないのだが。私が気がついたのは、料亭「不二楼」が『剣客』にも出てきた?と言うぐらい。まだまだ読み込みが足りないね。2018/02/25
m
8
図書館のリサイクル本。「梅安」シリーズと繋がっているらしいが、残念ながらそちらは未読。いつの世も裏稼業は殺し殺され恐ろしい。2019/03/28
ツカモトカネユキ
6
仕掛人につながる短編集。その後のいろいろな作品にもつながっていきます。 全ての話のオチにすんなりとは、いきませんが、 これくらいの短編が読みやすいです。 連作ではまる前に軽く池波作品の世界に浸かるのにうってつけです。2018/01/08