内容説明
将軍家の元お庭番の許へ届いたのは井伊直弼暗殺の依頼だった。しかし井伊公は幽界の家康が乗り移った玉の命で動く、不思議な黒衣の集団に守られていた。元お庭番の活躍を描く表題作のほか、朝鮮で覚えたキムチの味が忘れられない剣術使いの、すべてを捨てて漬物作りに熱中する「辛うござる」など3編。卓抜した着想が光る鬼才の初の幻想時代小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
34
とにかく「辛うござる」がダントツに楽しめた。この作品が読めただけでも読んだ価値あり。正直、山田氏にこのようなスラップスティック的要素があろうとは思わなんだ。いろいろ読んだつもりでいたが、このような作品にふと出会えることが嬉しい。「あやかし」は少し物足りず、表題作はまずまず。2012/06/05
ホレイシア
7
短編が三つ。表題作の井伊直弼暗殺の話、史実と虚構のミックスが見事。戦国時代を描いた「御贄衆」にはちと劣るが、読ませます。「辛うござる」も着眼点はいいと思うけど、いかんせん、私自身はキムチが苦手なので感情移入は無理だった。山田作品としてはまあまあかな。若いときの作品だもんね。2010/07/13
魔魔男爵
6
本書のベストセリフ「功名といえばきこえはいいが、人を殺めることではないか。人を殺めて、殺めた者の名を首帳に記して、なんの功名ぞ。」チャンバラSF短編集。宇宙人を朝鮮妖術師に変えれば、荒山徹の世界になります。剣禅一如を超える究極の兵法、剣食一如、至高の食材はキムチ!正紀は荒山徹に30年先行していたなw2010/02/27
けいちゃっぷ
4
時代小説はちょっと苦手。
紫
1
山田正紀先生の芸域の広さがうかがえる時代小説中短編集。「あやかし」と「吉原螢珠天神」 は、共に伝奇チャンバラ活劇ながら、軽妙な前者と重厚な後者という好対照の出来栄え。「辛うござる」はキムチに熱中するあまり身の破滅を招いてしまう侍の悲喜劇。南米原産の唐辛子は日本経由で朝鮮半島に伝わったもの。時代考証がおかしいだろう! と思いつつ読んでいたら、「塩漬けのキムチに唐辛子で味つけするのは主人公の工夫でした!」という大ウソでさらりと解決。現在キムチは日本起源だった! という衝撃(笑撃?)の一編であります。星4つ。2015/03/22