内容説明
天正12年、九州の雄だった竜造寺隆信が戦死し、佐賀35万石の藩主の地位は、隆信の家臣だった鍋島氏に引き継がれた。異例のこの交代劇は、表面おだやかにみえたが、竜造寺家につながる人々にとって、次第に怨念をつのらせる推移となった……。乱世に生きる武門の消長と士魂をドラマチックに描いた歴史長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro13
22
九州を舞台とした時代小説を数多く発表した滝口康彦の長編。戦国時代を代表する大名に龍造寺隆信がいるが、沖田畷で戦死して以降、龍造寺家は急速に存在感を失い家臣筋だった鍋島家が肥前の実権を掌握するに至る。この経緯に興味を持って手に取ったのが本書。主人公は龍造寺隆信の甥・家久(多久安順)。龍造寺の血が流れてはいるものの、鍋島家の家老という立場であり、お家再興を目指す龍造寺嫡流の伯庵に対して複雑な心境を示しつつ、藩を守るために評定の場で敵対・論駁する。安順の苦衷が強く印象に残る作品。2019/09/14
さっと
9
戦国時代に九州の覇権を担いながらも没落した龍造寺家と、代わって佐賀35万石を盤石のものとした鍋島家の交代劇。龍造寺一門の柱石でありながらも鍋島家と血縁で結ばれ、筆頭家老として藩のために尽くす家久を主人公に、龍造寺家再興を目指す遺児との果てのない対峙が延々と綴られる。やや冗長でも、この武士の世の息苦しさでひきつるような感じが滝口作品の持ち味。「雪にも風にも折れぬ大樹であれとはいっても、しょせん無理、風のままに、たよりなく揺れてこそ人間であろう」。個を犠牲にして組織を背負うもののうしろすがたもしぐれていくか。2018/02/21
トリコ
4
肥前が龍造寺家から鍋島家に政権移譲していく様を中の人たちの熱い生き様とともに綴った愛憎劇。何となく今まで鍋島直茂って隆信様のみに忠義を尽くして亡き後は素知らぬ顔でその椅子を盗ったというイメージだったんですが、どっちかって言うと周りにそれを阻む意志がなかったせいっぽいですね。滝口先生の書かれる武士は生きるのが辛くなるほど鬱ですが惹き付けられます。
renren
4
佐賀藩、竜造寺→鍋島の政権交代を題材にした長編。初法師と家久、いずれも人物造形が凄まじい迫力。心ならずも対立する二人だが、それぞれに強く、切ない。覚悟を決めた人間の強さと無力、名を残さない、流されるままに迎合してゆく「衆」の弱さしたたかさの対比。強靭な精神を持った主人公はふたりとも敗者で、彼らは勝者である同じく強き鍋島氏ではなく、名もない時流の迎合者「衆愚」に敗れ去ったのだ。あるいは現代にも通ずるテーマか。良作。2010/07/29
フーミン
3
(ネタバレご注意)多久安順が伯庵と敵対し、中村千左衛門が伯庵を擁護する結末には、なぜかしら新鮮な驚きを感じた。この小説からも、武士というものの悲哀、苦悩を感じた。いい作品でした。2013/06/18
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